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まだ頭が覚醒していない中、リーシャは寝返りをうつ。
「……ん」
コツリ。
手を伸ばして枕より横へ動かした時、異なる固い何かが指先に触れた。
「え……な、に?」
ぼやける視界で目を細めると、朝日に照らされた小さな包装紙に包まれた箱があった。
なんだろうと、それを手に取りリボンを解いて包装紙を剥がしていく。
「……あ、これ……」
中に入っていたのは、この前ローと町へ出掛けた時に見つけた指輪だった。
安くも高くもない値段だったが結局は買うのを諦めたものだ。
リーシャが欲しいと知る人物は一人しか思い当たらず、クスッと笑う。
まさかこんなサプライズなプレゼントをくれるなんて。
指輪よりもその気持ちがとても嬉しかった。
「後でお礼しなきゃね」
リーシャは頬を緩ませたまま指輪を指輪入れに戻した。
階段を下りキッチンへ向かうと香ばしい香りが漂ってきた。
チラッとキッチンを覗いてみるとジェイドの後ろ姿があった。
「ジェイドさん」
「リーシャちゃんか。おはよう、よく眠れたかい?」
「おかげさまで」
朝ご飯の用意までしてくれたジェイドにありがとうございます、と言って代わりにお皿を運ぶ。
テーブルへ向かうとローが新聞を読んでいた。
「ローくん、おはよう」
「あァ」
素っ気なく返事をするローだが、こちらを伺うようにチラチラと視線を寄越す姿にふっと笑う。
気になってしょうがないようだ。
リーシャは自然に振る舞い椅子に座る。
「朝……」
「ん?」
ボソリと呟かれた言葉に
リーシャは首を傾げ彼を見るとプイっ、とローは顔を背けた。
「ふふ……、ちゃんと見たよ。指輪ありがとうね」
彼にそう言うと、リーシャはニコッ、と笑いかける。
ローはその言葉に反応すると、こちらを横目で一瞥してあァ、新聞をめくった。
(わかりやすいなぁ……)
年相応な態度をとるローにリーシャは密かにそう思った。
「ローくんは何か欲しいものはある?」
お礼の代わりというか、元々買うつもりだったプレゼント。
今年はローが欲しいものを選ぼうと決めていた。
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