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「お前トラファルガーのところに住んでる奴だろ」

「マジで女だぜ」

「……どいてほしいんだけどな」



リーシャはまさに今、困っていた。
ジェイドに頼まれたモノを買いに行ったのはいいが、なぜか途中で男の子二人がリーシャの道を塞いできたのだ。
相手は十二歳の子供。
元の世界ではすでに成人しているだろうリーシャの対応はそのまま、大人の対応だった。
ケラケラと悪意に満ちた笑みを浮かべる男の子達は拍子抜けする。
リーシャの反応が薄かったからだろうか。
よくわからなかったが、二人は顔を互いに見合わせると眉を寄せてコソコソと相談し合った。
その間にリーシャはスッと先を行く。
それに気が付いた男の子二人は慌ててもう一度リーシャの前に立ち塞がると焦ったように引き止めにきた。



「ボ、ボスが呼んでるぜ……!」

「そうだ。お前をなっ!」




リーシャは、はてと首を傾げる。
ボスと言う人物に心当たりがまるでないからだ。




「ボスって、誰?」

「テッドだ!ボスだ!」

「呼んでる!」



男の子二人はリーシャの腕を掴み歩かせる。
困ったように静止をかけるが聞く耳を持たない。
振りほどこうと思えば、振りほどくことはできる。
大人が周りにはいるから助けも呼べるので、得に焦る気はなかった。
気にかけることがあるかと問われれば一つ。
ローのことだ。
彼はきっとリーシャがいなくなれば捜しにくる。
せめて一時間くらいで帰ろうと心の中で決めた。





しばらく二人の男の子達に掴まれながら歩き、見えたのは古い家だった。
屋根の瓦が欠けていたり所々割れている。
壁もボロボロで手入れされているようには見えなかった。
かと言って、家の周りに茂っている草は適度に刈られていたので、そこまでではないようだ。
煙突からはモクモクと煙が上がっていることに気が付くと、男の子二人は家の扉に向かって叫ぶ。



「ボスぅ〜!」

「連れてきたぜぇ!」



すると、待ってたと言うように扉が開きテッドが顔を見せた。
鼻をスンとならし、鼻の下に指を擦る。
テッドはリーシャの姿を目に映すと目を細めニッと口元を上げた。



「よくやった。もう帰っていいぞ」



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