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「ん……」



リーシャの薄い唇から声が漏れ、ゆっくりと瞼が開く。
まだぼんやりとしていて焦点が合っていない。
その目がローを確認すると、ハッと彼女は起き上がった。



「あ、スポンジっ!」

「まだ大丈夫だ」



慌ててオーブンを見に行こうとするリーシャに告げれば、ホッと彼女が息をついたのが見えた。



「いつの間にか寝てたみたい……起こしてくれてありがとう」



リーシャは笑ってローを見た。
真っ直ぐな瞳がローは少し苦手だ。
誰かに何かを言われたりするのも、あまりない為に慣れていない。
くすぐったいのに、暖かい何かが胸を覆った。








***










「……できた」

「これで終わりか?」

「後は苺とか果物を乗せるだけだよ」



チョコの生クリームをスポンジに塗れば、後は簡単な作業だけだ。
リーシャが説明をすれば、ローはケーキを見つめた。



「やる?」

「やる、けど……いいのか?」

「もちろん」



遠慮をするローにふっ、と笑いリーシャは果物の皿をローの前に持ってきた。
すると、彼はジッと果物を見つめるとそれを掴んだ。



「苺はどこに乗せるんだ?」

「ローくんが置きたいところでいいよ」



リーシャがそう言えばローは眉間にシワを寄せた。
怒っているようではなく、困っているようだ。
少しの間ケーキを穴が空きそうなぐらい見続けた後、彼は恐る恐るといったように果物をちょこちょこと生クリームの上にデコレーションしていく。



(真剣……)



真面目なローに失礼だとは思うが、凄く可愛い。
ギャップというもののせいかもしれない。
最後の果物を乗せ終えた時にはローの安堵する息が聞こえた。
余程、集中していたようだ。



「どうだ?」

「うん。凄く綺麗にできてるよ」



にこりと笑いながら頷けば彼はニッと満足げのある笑みを浮かべた。









ジェイドを呼び、ケーキを出す頃には窓から夕日が見えていた。



「上手くできてるじゃないか」

「ローくんが盛り付けとかしてくれたんですよ」

「……言うなよ」



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