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張り切るローにリーシャはしばらく見守ることにした。
彼の真剣な表情に子どもらしさを感じる。
最初に出会った頃は淡々とした違和感のある少年だと思ったが、今まで過ごしてきた中でローを理解していった。
とは言っても、全てを知るにはまだまだ時間はかかるだろう。



「できたぞ」

「ありがとう」



ローが達成感に満ちた表情をしてリーシャを見た。


「じゃあスポンジを焼くから、しばらくは休憩」

「わかった。出来たら絶対呼べよ」

「うん」



念押しするローに苦笑いをするリーシャはこくりと頷いた。
もしも呼ばなかったら、きっとローは拗ねてしまうと簡単に想像できる。
リーシャが頷くのをしっかりと確認したローはニヤッと笑いキッチンからいなくなった。



(なんだか断れないなぁ……)



あの笑みに威圧感を感じるというのもあるが、なによりもローが一生懸命ケーキ作りに励む姿が微笑ましい。
去年もそうだが、ケーキにクリームを付けたり苺を乗せたり。
つまり、見ていて胸にグッとくるものがあるのだ。



「なんて、言ったら怒るかな……」



子供扱いされるのが嫌いなロー。
ジェイドに頭を撫でられると黙ってそっぽを向くのにリーシャがすれば怒ってしまう。
きっと自分が異性だから恥ずかしいのだと感じ、それと同時に苦笑する。
あの藍色の髪色を見ているとつい頭を撫でたくなるのだ。
リーシャの髪は薄い緑がかった緩いウェーブ。
ローのそれは柔らかな髪質だから羨ましい。









***








チラリと時計を見ると、ちょうどリーシャが言っていた時間だった。



(もうそろそろだな)



読んでいた本を閉じてベッドの横へ置く。
スッと床に足をついて扉を開けて階段を下りる。
すると、ふわりと甘い香りが漂ってきたのでおそらくケーキのスポンジが焼けたのだろう。
ローはリーシャを探し、ソファのある場所を見てみればリーシャがすやすやと寝息をたてていた。



「起きろ」



なんとなく起こしたくないと思い、無意識に声が小さくなった。
しかし、ここで起こさなくてはケーキが作れないと思い直し、ゆるりとリーシャの肩を揺らす。



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