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「ケーキは何がいい?」
「生クリームたっぷり」
「今年はチョコレートケーキが食べてみたいね」
この家でリーシャは三回目の誕生日を迎えるにあたり、毎年リーシャが腕を振るってケーキを作る。
その度にロー達にリクエストを尋ねるのだ。
今日はチョコレートケーキの生クリームたっぷりがリクエストのようで、ローはいつも同じリクエストだが、ジェイドがケーキの内容を言う。
だから、毎年生クリームたっぷりが定番になっている。
「了解です」
リーシャはルンルンと、機嫌良く材料を混ぜていく。
ジェイドが今日は病院を休みにしてくれたので、彼は一日中いる。
患者やジェイドには悪いと感じるが、この時は嬉しさが勝つ。
「じゃあ私は書斎でやることを済ませてくるよ」
「あ、はい。出来たら呼びに行きますね」
「あぁ。楽しみにしているよ」
今だ敬語が抜け切れてないのは、もう癖としか言いようがない。
しかし、ジェイドはリーシャに強要しないので、そのまま敬語で話しているのだ。
「俺も手伝う」
ジェイドが書斎に行った後、ローがリーシャの隣に並んだ。
「ありがとう。じゃあ卵割ってもらっていい?」
「あぁ」
ローはよく、リーシャが何がしていると手伝いに来ることが多い。
その様子や仕草が可愛くて、なんとも頼もしい。
ちらりと後ろを見れば、ベポはソファでくつろいでいた。
「ローくんは手が器用だね」
「細かい作業を手伝ってるからな」
ローはジェイドの手伝いもしていた。
ジェイドの仕事を見たりと、観察をしているところをリーシャはよく見掛ける。
「ローくんは、医者にもなるの?」
「海賊兼医者になるつもりだ」
「凄いね」
素直に感心すれば、ローは顔を赤くして照れたようにそっぽを向く。
可愛いなぁ。
リーシャはくすりと笑みを漏らす。
「全部割ったぞ」
「ありがとう。次は卵を溶いてもらっていい?」
「ん」
ローの頷く動作にリーシャはまた笑った。
「溶いた」
「じゃあ薄力粉を入れて、砂糖も……」
「やる」
「ふふ……じゃあ頼もうかな」
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