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「やっぱりキャプテンは凄いんだね!」
わぁっ!と喜ぶベポにリーシャは複雑な心境になる。
「ねぇ、ベポ」
「なに?」
「今、ベポは幸せ?」
「幸せ、てなに?」
ベポの言葉に苦笑する。
なぜ、ローはベポに肝心な言葉を教えないのか。
ベポにゆっくりと言い聞かせなければ、とベポを見据える。
「幸せっていうのはね、例えば、ベポが好きなモノを食べた時、美味しい!って感じたりするの」
「うん」
「それと、ローくんと遊ぶ時に楽しい、と感じたりするときの、もう一つの感情のことだよ」
「感情?」
「そう、感情」
ベポがぱちぱちと目をしばたかせ、リーシャを見る。
「じゃあ、俺、しあわせ!」
嬉しそうに幸せ、と連呼するベポに目を細めて微笑んだ。
ベポがそう思っているのなら。
リーシャは目を閉じて開け、ベポの頭を撫でる。
「ローくんを、よろしくね」
「よろしく?」
「私はやってあげられないから」
ベポが不安そうにリーシャを見下ろす。
拾ったばかりの白クマはリーシャを見上げていたのに。
ベポがオロオロとしているのは、リーシャが泣きそうに笑っているからだろう。
「かなしいの?」
「そうかもしれないね……」
自分がこの世界の人間ではないと、世界を変えてしまいかねないリーシャという存在を、ローやジェイドに知られたくないと思っている。
本当に自分は狡いと、薄情に感じた。
でも、リーシャはこの、何気ない日常が好きで。
それとは別に、このワンピースの世界にいてはいけないと、もう一人の自分が囁く。
どうすればいいのか。
罪悪感にも苛まれている。ローに記憶喪失と言っていることに。
もう、何度真実を言おうか迷った。
「私には、資格がないから」
「資格?」
ベポの疑問に満ちた表情に、リーシャは苦しげに笑うことしかできなかった。
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