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04


ローは最初に雪の中で倒れている人間を見た時、本気で雪女だと思ってしまった。

「………」

雪の中で倒れている女を少しの間見ていた。
女、と言ってもローとそんなに変わらない年齢の少女だったが。

「……連れて帰るか」

別に親切心で動いた訳ではなかった。
ただ父親が医者でありローも医学を学んでいて、こいつが病人というだけでそれだった。
少女を担いで家に入ると父は一瞬驚いた顔をした後、すぐに医者の顔になった。

「この子はどうしたんだい?」

父は少女を手当しながら彼に質問した。

「拾った」

ローが短くそう言うと父親は嬉しそうに笑った。

「そうか。ローがこんな事をするなんて珍しいね」

「別に、ほっとくのも後味が悪いと思っただけだ」

そう言うと父親は手当が終わったようで、ローの隣に座った。

「ありがとうな、ロー」

父親は目を細めながらローの頭をクシャリと撫でる。

「………」

ローは恥ずかしくなって顔を背ける。

「あの子が起きたら優しく接してあげてくれ」

父親はそう言いながら少女を見た。
ローは父親の医者としての医術に誇りと尊敬を持っている。

「わかった」

頷くと、父親は薄く笑った後、部屋を出ていった。
それから数時間後、少女が目を覚ました。
急いで父親を呼ぶと、そいつは戸惑いながらも質問に答える。
だが、わかった事は名前だけでその他はわからないと言う。
記憶喪失だった。
記憶喪失の少女、リーシャはこの世界の事を全くと言っていいほど、何も知らなかった。
だが、リーシャが目を覚ましてから二日後、少しの進展があった。

「海賊とか……いたりするの……?」

「そんなの当たり前だろ」

だが、常識の中の常識だけだった。
海賊を知らないなんて、記憶喪失がゆえだろうが、ローはリーシャの言葉を待つ。

「ゴールド・ロジャー…」

小さく呟いた言葉にローは少しだけ反応する。
今や時の人となってしまった大海賊時代を生きた、ゴールド・ロジャー。
そんな事を思っていると、リーシャが微かに震えていた。
どうしたのか聞くと、少しだけ思い出したと言う。
それからリーシャはいろいろ質問したいと言ってきた。
まずは自身の事。
助けた事に礼を言われると、リーシャの目を見れなくなり視線をずらす。
すると彼女は面白そうにローが可愛い、なんて言ってきた。
男に可愛いなんてどう考えても可笑しいだろ。
反抗の意味も含めてお前も同じ歳だろ、というと、リーシャは悲しそうに笑って。
ローはその時、リーシャが壊れそうな気がして、無意識に相手の頭に手を置いて言葉を言った。

「心配すんな。おれが守ってやる」

彼女は嬉しそうに笑って、ローの手を握る。
雪女でもなければ、ただのどこにでもいる少女なのだ。
この少女、リーシャを何があっても守りたいと思った。



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