45
「あ、ちょっと待って」
「なんだ?」
いつものようにローと町に出掛け、買い物をしているとリーシャの目に小さな指輪が光った。
「……可愛い」
「欲しいのか?」
「え?!……ち、違うよ。欲しくないから」
「そう言いながらさっきからコレちらちら見てるだろ」
「うっ……」
ローの言葉に図星だと言わんばかりにリーシャは言葉を詰まらせる。
確かに可愛いし、かなり魅力的なデザインの指輪で。
リーシャの好きな、ど真ん中ストレートなものだ。
しかし、そんなことは言えない。
ローにも、年下に買ってもらおうなどと図々しい感情などないが、リーシャは自分で買おうか悩みどころだった。
「もう……行こうよ」
結局、指輪は諦めることにしたリーシャはローを家に向かわせる為に背中を押した。
「………」
ローは指輪のお店からしばらく目を話さなかった。
***
「リーシャ、リーシャ」
「ん?どうしたのベポ?」
ベポがつんつん、とリーシャのエプロンを摘んで引っ張ってきた。
何かと思い後ろを向けば、ベポが不思議そうに首を傾げこちらを見ていた。
「キャプテンって偉いの?」
「キャプテン?」
普段聞かない単語にこちらも首を傾げてオウム返しする。
「ローが、キャプテンって呼べって、言ってた」
「ローくんが……?」
確かにいずれ、海に出て船の船長になろうと思っている彼は、ベポにとってはキャプテンにいつかなるかもしれないが。
リーシャは、もう呼ばせているのかと思いながら、ベポの先程の質問に答える。
「そうだね……キャプテンは偉くて、強いんだよ」
やはりそれで連想されるのは、麦藁帽子がトレードマークのルフィだった。
(ルフィは、もう十歳くらいかな……)
北の海と東の海は、とても遠すぎるため、確かめる術はない。
だからといって、知れる機会があっても、どうこうするつもりはないが。
[ back ] bkm