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リーシャがワンピースの世界に来て、三年が経った。
もう、随分とこの世界に慣れ、今日もいつものようにローと過ごしていた。
ジェイドの腕がいいことも、ローと勉強会に行って、常識も知った。
そんなことを、テーブルでぼんやりと考えているリーシャにローが近づく。
「ローくんも、十二だね」
「お前こそ、十三だろ」
しんみりと呟けば、返された言葉。
「私が来て、三年だね」
「もうそんなに経つのか」
「早いよね」
「そうか?」
リーシャの言葉に彼は頭を傾げる。
リーシャにとってロー達と過ごす時間は早く感じ、それと同時に、この世界の人物達を思い浮かべてしまう。
ずっと、リーシャはこの島で暮らし、おとなしくすることが先決なのかもしれない。三年も経つのに、一向に自分の世界へ戻る気配はないからだ。
「あと、何年したらローくんは海に出るの?」
「まだわかんねェ」
予想できた答えにそうだよね、とため息をつく。
(寂しいな、やっぱり……)
あとどのくらい、ローと過ごせるかわからない。
リーシャはつい、と顔を上げ、彼の顔をまじまじと見る。
「なんだよ」
「んっと……将来ローくんは、かっこよくなってるだろうなーって」
「かっこよく?」
「うん。かっこよく」
ふふ、と笑いながら言えば、ローは眉をひそめてリーシャを見る。
「そしたら、お前はどこにもいかないか?」
「え?」
どうしていきなり、そんな話しになるのかリーシャには理解できなく、ローを見る。
すると彼はふい、と横を向く。
「やっぱり、いい」
答えなくていいという意味なのか、彼はそのまま階段を上がっていった。リーシャはローの言葉を考えたが、全くわからないままだった。
***
口が滑ったことにローはギュッと、唇を噛む。
あんなことを彼女に言うつもりなどなかったのに。
かっこよく、男らしくなれば、リーシャが振り向いてくれると。儚い存在に、ローは手を伸ばしたくなった。
けして多くは望まない、だから彼女にはずっとずっと――。
そこまで考えると自分に笑えてきた。
「ガキか、俺は」
実際まだガキ、と 呼ばれる歳だが、嫉妬深い自身が嫌になった。
ベッドへ横になると天井を見上げる。
なんとなしの仕草だが、真っ白な天井の色がローの思考をリセットさせ、また考えた。
「海賊か……」
夢であり、絶対に叶える野望。
昔からローの野望は一つだった。
けれど、もう一つ増えた。
無意識のうちに。
その野望は、自分だけのものにしたい。
独り占めにしたいなど、ローの独占欲を少しずつ、じわじわと、沸き上がらせている。
「くそ……」
行き場のない感情に、ローは目を閉じてやり過ごすしかなかった。
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