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「リーシャ」

「ん……」



ふわふわとまるで体中が空っぽになったような軽い自分に不思議と違和感を感じないと、閉じていた目を開ける。



「お、かあ……さん?」



目の前には母がいた。
どうして、と呟くリーシャ。



「リーシャ、貴女に逢いたかった」

「夢だから?お母さんがいるのは幻?」

「幻かもしれないわね」



母は昔と変わらず優しげな面影を覗かせながら喋る。
リーシャの髪を撫でながら微笑む。



「今まで、ずっと淋しかった……」

「ごめんなさいリーシャ」

「謝らないで、だってお母さんだって被害者なんだから……」



悪いのはあの人なのだから。
そう意味を込めて母の手を握ればまるで本物のように暖かかった。



「あの人を恨めば貴女はそれに依存して人生を狂わせてしまうわ。だから貴女は何も恨まず幸せに生きて欲しいの」

「私は、お母さんさえいてくれればよかった」



言いたいことはわかる。
けれど今更自分の幸せを望むなどしていいのか。
無意識にローやジェイドといて幸せと感じることを心のどこかで駄目だと抵抗があった。
もしリーシャが異端児だと思われればロー達に迷惑をかけてしまうかもしれない。



「お母さん、私どうすればいい?」

「貴女の思うままにすればいいわ」

「後悔してしまうかも」



そう言えば母はリーシャの頬を撫で答えた。



「後悔するほど貴女はきっと幸せになっていくわ。だってそれは貴女が行動したという立派な証拠ですもの」

「お母さん……私は――」



母らしい言葉に頷きたかった。
けれど、できない。
リーシャが下を向くと母はスゥ、と消えていく。
夢が醒める。
リーシャは母を見ながら、そして縋るように手を伸ばした。
だがその手は触れることなく母は消えていなくなった。



「お母さん、私は……進まないといけない?」



まだ手に温もりを感じるリーシャは夢から醒める感覚を感じながら目を閉じた。



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