トラウマの正体
今日もノースブルーは雪が少し積もっていて肌寒い。
(あ、そういえば……)
「ジェイドさん」
「なんだい?」
ふとローくんの事で気になったことを思い出した。
「なんでローくんはグリンピースが苦手なんですか?」
そう尋ねるとジェイドさんはそのことか、と眼鏡を外しながら微笑む。
「突然どうしたんだい?」
「いえ…あの、ローくんのグリンピースに対するあの反応はちょっと……」
普通ならばグリンピースが嫌いとまだ九歳の子供が言うのはまだ頷ける。
だが私がジェイドさんに尋ねる理由は二日前のローくんと買い物に言った日の晩の奇妙な出来事を思い出したからだ。
***
「今日はピラフです!」
「美味しそうだね」
「……!」
ジェイドさんは笑いながらピラフをスプーンで掬っていたのに対し、ローくんはピラフを見た途端にピシリと固まった。
「?……あぁ、ローくんはグリンピース嫌いだったね。本当に嫌なら私が食べてあげるよ?」
ローくんはその言葉にいい、と首を振る。
そしてスプーンを持つと恐る恐るグリンピースを一粒掬う。
「これは普通のグリンピースこれは普通のグリンピースこれは普通の……」
「……!?」
彼は意味のわからない言葉を呟きながらいざグリンピースを口に入れようとした。
――ガチャンッ
が、口に入る前にローくんはお皿にグリンピースが入ったままのスプーンを置く。
「え!ロ、ローくん!そんなに無理して食べなくていいから…!」
力が抜けてぐったりと下を向いているローくんに慌てて声を掛ける。
彼の顔を覗き込むとなんとあのローくんが涙目になっていたのだ。
予想外のそんな彼の表情に不覚ながら可愛いと思っているとローくんは小さな声でごめん……と呟いた事に私は気にしないで、とローくんの頭を撫でる。
そんな出来事があったものだから私にとってはかなりレアなローくんを見られた嬉しさと異常な程のグリンピース嫌いが記憶に残っていた。
そう説明するとジェイドさんはふむ、と考えるように顎に手を置いくと思い出したようにあぁ、と顔を上げた。
「グリンピースが嫌いな原因はわからないがグリンピースの話をした事ならあるかな」
「グリンピース……?」
その内容が気になりジェイドさんを見るとその気持ちを理解してくれたように微笑みながら話てくれた。
***
ある一人の女の子がいてその女の子は村一番の問題児だった。
ある時は人に嘘をつき、そしてある時は人の畑を荒らしていた。
そんなある日女の子はグリンピースが育っている畑を荒らしたその日の夜、女の子は夢にうなされる。
たくさんのグリンピースに追われる夢だった。
助けて、と叫んだ女の子はばっと夢から覚め、それから女の子は汗をかいた顔を洗おうと洗面所に向かい顔を洗った。
そして前にある鏡を見たら――。
顔がグリンピースになっていた。
***
「という話なんだか、なかなか面白い話だろ?なのにローは何故あんなにグリンピースを嫌うのはわからないんだ……」
「………」
ジェイドさん何言ってるのか。
(嘘でしょ……)
ジェイドさんの天然さにある意味怖くなった。
そんな話をされた日には九歳の子供でも寝るものも寝れなくなるし、グリンピースだって嫌いになるに決まっている。
(ローくん……)
((私はローくんのグリンピース嫌いの理由を悟らずにはいられなかった))
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