03
リーシャが目を覚ましてから二日が経過した。
まず最初に知ったのはこの場所が、いや、この世界がリーシャのいた世界とは違うという事。
驚いた事にこの世界をリーシャは知っていた。
「ノースブルー……?」
「あァ。本当に何も知らねェんだな」
「う、ん……」
リーシャはその言葉に覚えがあった。
だがそれは――。
「海賊とか……い、いたりするの……?」
「そんなの当たり前だろ」
リーシャはありえないと思いながらもそう聞くと、また倒れそうな衝動に駆られる。
ローの言葉でリーシャの中にある一つの仮説が真実になった。
「まさか……そんな……!」
リーシャの様子にローは怪訝な顔をする。
「何か思い出したのか?」
「……少しだけ、ね……」
リーシャの仮説が正しければ、この世界は間違いなく“ワンピース”の世界になる。
「ゴールド・ロジャー……」
「あァ。ゴールド・ロジャーは何年か前に処刑されたがな」
ローは淡々という口調で言った。
リーシャは動揺していたが、この世界のことを知る為にその事は後回しにしようと思った。
***
「私は雪の中で倒れてたんだね……」
「そうだ。結構危なかったんだぞ」
「そっか……ありがとうね、ローくん」
「別に……」
ローは照れているのかリーシャから視線を外す。
「ふふ……可愛いところがあるんだねローくん……」
リーシャが笑うと、ふて腐れたようにローがこっちを向いた。
「お前だってガキだろ……」
「あはは、そうだった、ね……」
リーシャは自分もローと同じぐらいの歳になっていた事を思いだし、とても不安になった。
――ポン
「……?」
突然頭に何かが乗った。
「心配すんな。俺が、守ってやる」
それはローの小さな手で。
彼を見上げるのと同時に、穏やかな優しい声色で彼はリーシャにそう言ってくれた。
「っ……ありがとう、ローくん……」
リーシャはローの手を握りながら少しだけ、ほんの少しだけ泣いた。
(彼と私の最初の約束)
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