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「貴方、本当にジェイドさんの知り合いですか?」
リーシャがチラチラと疑わしく男の腕を見ると、その刺青への視線にロイドが気づき、怪訝な表情から納得したように「あァ……」と呟いた。
「これが恐いか?」
「当たり前じゃないですか……」
「なら気にするな。ないと思えばいい」
飄々と笑うロイドにリーシャは困惑しながら思考に浸る。
(信用できるの……?)
どうみても堅気には見えない。
強い、その瞳がそれを物語る。
ロイドから出来るだけ離れて、ここならと腰掛けた。
これだけ距離があれば話し相手になれる。
そう彼に伝えれば、相手は不服そうに顔を歪めた。
「心外だな」
「そうですか?」
気に入らないとばかりにドカリと腰を下ろすロイド。
「お前いくつだ?」
「十三ですけど」
「ほォ、見た目と違って中身はしっかりしてるんだな」
目を細めて覗き込むように自分を見るロイドにギクリとした。
バレているはずがないとわかっていても、彼の目はまるで心の内を見透かされているようで少し怖い。
「私は十三なんで、当たり前です」
「そうだな」
くつりと笑うロイド。
内心ホッとしながら男を見た。
「貴方こそ、見た目が怖いですよね」
「見てくれだけさ」
「………」
疑わしい目を彼に向ければ、彼は両手を軽く上げて茶化した。
「確かに、堅気ではないな」
「やっぱりでしたか……」
危害を加える気配はないが、危険な類であることは確かだ。
目を家に向ければロイドも同じように見た。
「なぜここに?」
「お前はなぜだと思う」
質問を質問で返され、リーシャは考える。
ジェイドを知っていることは確かだが、自分に話し掛ける理由がわからない。
「私を誘拐するんですか?」
医者というのはかなり儲かる。
だから、それを狙い自分に目を付けたかもしれない。
そう思い、検討をロイドに言えば、彼は突然笑い出した。
「ククッ……誘拐、ねェ」
可笑しそうに笑うロイドはこちらを見ると少し自嘲に満ちた表情を僅かであるが浮かべた。
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