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あれから数日、ローはケーキのおかげか機嫌もよくなり、いつも通りの生活に戻った。
「リーシャ」
「なぁに?」
てくてくと後ろへついて来るローに頬を緩めながら洗濯籠をしまいに向かう。
「今日は勉強の日だ」
「勉強の日?」
初めて聞く言葉にリーシャは首を傾げていれば、ローは本を閉じた。
「一週間に一回開く勉強の会に行くこと」
「へぇー?ローくんは前から行ってるの?」
「行かない日もあるけど行く方が多いと思う」
聞けばジェイドがリーシャも連れて行ってはどうだ、とローに提案していたらしい。
一年も経てば、大分慣れた環境になったとジェイドは判断をしたうえでそう行ったのかもしれない。
「じゃあ少し参加させてもらおうかな」
「本当か?」
「うん」
こんなに期待した目で見られれば断る理由もないため承諾する。
ローは嬉しそうに「じゃあ用意してくる」と、二階へ上がっていく。
「勉強会、か……」
自分の見た目は十一歳だが、中身は十九歳。
本来大学に今でも通っていたはずだったのだ。
しばらく勉強の場にいなかったリーシャは、今だ残る記憶に目を閉じて思い出す。
「学校……」
ぽつりと呟いてもなにも起こらないとわかっている。
それに元の世界に帰りたいという衝動に駆られることもない。
なぜだか自分にもわからないけれど、今のこの生活を、ジェイドやロー、このノースブルーの人達がいてリーシャは一人じゃないという幸せだけで十分なのだとそう感じる。
「用意できたぞ」
「私も大丈夫だから、行こうか」
パタパタと可愛らしい足音を立てながらリーシャに話し掛けるローに、笑みを向けながらコートを手に取り扉へ向かった。
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