35
「何か欲しい物?」
「あァ」
洗濯物を外に干していれば、一緒にその場で本を読んでいたローが突然リーシャにそう聞いてきた。
「うーん……今は得にないけど……あ、今塩が切れてて――」
「そういう意味じゃない」
「え?」
はぁー、とため息をついたロー。
じゃあなんだろ?
突然何か欲しい物がないか聞いてくる彼の意図が掴めず首を傾げるばかりでいればローはボソリと呟いた。
「もういい。自分でどうにかする」
「え?あ!ローくん!」
何を呟いたのかは聞こえなかったが、どこか落ち込んでいた空気に彼は本を閉じると家へ戻ってしまった。
「??………」
意味がわからないまま浮かんだ疑問にリーシャは考えるのをやめて、残りの洗濯物を干した。
***
「リーシャちゃん」
「はい」
ジェイドに呼ばれ、リーシャが振り向くと「買い物に行ってきてもらえるかな?」と頼まれたので二つ返事する。
「ローも一緒に連れて行ってくれないかい?」
「ローくんもですか?」
普段はリーシャ一人でいくのに、と不思議に感じているとジェイドは少し困ったような表情で言った。
「あの子は最近何か考えているようで……心配していてね」
「あ、そうですね……」
言われてみればそうだと思ったが、それがどうリーシャに結び付くのか疑問を残したままローを半ば強引に家から引っ張って町へ出掛けた。
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