01
「……そ……ほ……ロ……」
誰かの声が聞こえる。
それになんだか体が暖かい。
リーシャは今、夢を見ているのかもしれない。
「と……こ……だ……」
今度は違う人の声がした。
嗚呼、目を開けなくてはいけないのか。
――パチ
「………」
「……親父、こいつ目ェ覚ましたぞ」
リーシャが目を開けた時、最初に写ったのはまだ幼い男の子。
男の子が叫んだ後、男の人が視界に入ってきた。
「大丈夫だよ、此処は病院だからね」
男の人は言い聞かせるように言った。
「あ……えと……」
リーシャは途中で言葉が出なくなった。
なぜなら自分の声がまるで幼い女の子のように高かったからだ。
「?……まぁ、無理することはない。ところで君はまだそんなに小さいのにどうしてあんなところにいたんだい?」
男の人は優しく言ったが、リーシャはある単語に引っ掛かりを覚える。
「……小さい……?」
リーシャは全く意味がわからなかった。
「あぁ。ローと同じぐらいじゃないか?なぁロー?」
「………」
男の子は黙ったままリーシャを見ている。
「え、な、何言ってるん…」
リーシャはそこで体に違和感を感じた。
(む……胸が、ない)
リーシャが真ん中へ持っていった時、あるはずの膨らみがなく、全くの平らだった事に言葉を失う。
そのことにフリーズしていると、ローという少年が鏡を持ってきてくれた。
「見ろ」
リーシャは言われるがまま鏡を受け取り、覗く。
「……!!?」
そこには十九歳であるリーシャの姿はなく、十歳ぐらいであろう自分の姿が写っていた。
(夢だと何度思ったことか)
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