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「キャアア!ロー様愛の逃避行ですの!?」
「………」
顔を赤く染めきゃいきゃいと騒ぐ女の子にローは無言で玄関に向かう。
「それでは食事の準備を……て、ロー様!?」
驚きの声と共にバタンと扉が閉まる音。
「……やっと静かになった」
「あはは……追い出したんだね」
「当然だ」
スッキリとした表情で玄関から返ってきたローに苦笑い。
「あの子は結局誰なの?」
「アリシアっていう貴族の娘」
「き、貴族?……なんでそんな子がローくんに?」
貴族といえば民間人を好ましく思わない人種だとこの前ローが説明していた。
「あいつの親は親父の元患者で難病に犯されていたところを救ったらしい」
「え、ジェイドさんって有名だね」
「まァな。その親の娘が一緒に家に来た時から度々こんな風に来るようになったんだよ」
ローの言葉にそういうことか、と納得する。
「大変だね」
「別に。ハエだと思っておけば気にならない」
「そ、そっか」
リーシャはアリシアという子に少しだけ同情したのだった。
***
「あっはっは」
「笑い事じゃねェよ」
「そうですよジェイドさん。びっくりしたんですからね」
ジェイドが帰宅した夜、リーシャは昼に言った通り沢山あったチョコレート達を溶かしてチョコレートフォンデュを作った。
夜ご飯がチョコレートフォンデュなんてバレンタインならではだ。
「いやぁ、だからアリシアちゃんのお父さんからお詫びの電話があったんだね」
「電話、ですか?」
「あぁ、家の娘がご迷惑かけました。ってね」
「父親は律儀なのに娘の躾がなってねェな」
ローが昼間の事を思い出したのか不機嫌な様子だ。
「まぁまぁ。あの子に悪気はないだろう」
「そうだよ。あるなら好意だけだと思うよ」
リーシャとジェイドがそう言うとローは「それでも嫌いだ」とそっぽを向く。
「ふふ……あ、そうだ!」
リーシャはそこでローとジェイドのバレンタインチョコを取り出し二人に渡す。
「どうぞ」
「ありがとうリーシャちゃん」
「もらっとく」
リーシャは二人の態度の違いにまた笑ったのだった。
波乱な一日でした。
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