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「離れろ」

「そんな照れ隠しも素敵!」

「黙れ」

「………」

リーシャはひたすら言葉を失っていた。
だって先程家に上がり込んできた女の子がローを見つけるなり抱き着いたのだから。
女の子は嬉しそうに抱き着いているけどローは嫌そうな顔をして必死に引きはがそうとしている。


「二人は……恋人、とか?」

「違う」

「そうですわ!」

違うようだ。
多分思い込みの強い女の子なのだろうとローに向けて苦笑いをした。
リーシャの本来の年齢は十九歳。雰囲気や言動でお互いがどう思っているかなんてカンでわかる。
つまり、ローは嫌がっているけれど女の子はローのことが好きなのだとすぐに理解できた。

「とっとと離れろ虫」

「虫って、酷いですわロー様っ!」

「じゃあ俺を嫌いになれ」

「それは無理ですわ!」

エンドレスなやり取りにリーシャは見ているしかない。
するとやっとの事で引きはがしたローはリーシャの方へやって来る。

「リーシャ、向こうで続きするぞ」

続きとはチョコレート作りのことだろう。
ローがリーシャの手を引っ張りキッチンへ向かおうとする。

(え、放置?)

あの子はいいのか。
というか一体誰だろう。

「お待ちになって!」

「なんだ、まだいたのか」

(………)

女の子の扱いが凄い。
普段見られないような姿にリーシャは微苦笑する。

「その子は誰なんですの!?」

「お前には教えない。お前も絶対答えるな」

ローに念を押されとりあえずはぁ、と頷いておく。
こういうパターンはリーシャが一番巻き込まれるからだ。
よく小説でもあるし、厄介事には関わらない方が身のためだろう。
ローと私は女の子を放置したままキッチンへ再び歩き出す。

「っ、わ、私も行きます!」

やはりというか、着いてきた。
ローは顔をしかめ私の手を離し女の子の手を掴む。



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