21
「ここはずーっと雪が降り続いているんだね」
一年をこの世界で過ごしているリーシャは改めてノースブルーという名は伊達ではないな、と感じていた。
「お前の住んでいた所は……覚えてるか?」
ローが本を片手に尋ねてきた。
どう答えればいいのかわからない。
(言わない方がいいのかな……)
迷いに迷った結果―。
「ぼんやりとだけどね……」
と答えた。
嘘をつくたび良心がつきりと痛んだけれど、必死に苦笑いをしながら隠す。
(我ながら弱いなぁ)
最初に嘘をつくと決めたのに自分の決断に心が揺れる。
「……どんな所だ?」
「んーとね、一年中ここみたいに雪ばっかりじゃなくて……桜が咲いてたよ」
「―桜?本で読んだ事がある」
ローは興味深げにリーシャを見る。
そういえばチョッパーも桜に憧れていたと思い出す。
「桜は」
「うん?」
考えに浸っているとローがなんとなく目を輝かせながら聞いてきた。
「桜は、ピンク色なのか?どんな花なんだ?匂いはするのか?大きさは……」
「ちょ、ローくんたんまたんまっ!」
一気に質問攻めをしてきたことに驚いた。
今までこんなに早口につらつらと話すローは一度も見たことがなかったからだ。
(そっか、知らないからだよね……)
雪しかしらない人間は雪以外のものに惹かれるのは当たり前のことなのだろう。
かくゆうリーシャも自分の国知らないから他の国がどんな所なのか知りたくなる。
「悪ぃ……」
突然ローがしょんぼりと謝ってきたことにリーシャはフッと笑いながら首を横に振る。
「全然構わないよローくん。まずは一つ目の質問だけど、桜はピンク色だよ。あと、どんな花かぁ……まぁすごく大きいのから小さいのまで色々かな」
そこまで説明してローを見ると何故か不思議そうにこちらを見つめていた。
「どうしたのローくん?」
するとローは少し顔を俯かせて小さな声で言った。
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