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耳まで真っ赤なローはリーシャの言葉にプイッと横を向く。
その様子に微笑ましくなり、ローにはわからないようにクスッと笑った。
***
「あいうえお、だよ」
「ア、イ……」
「あ、い、で止まっちゃうね」
「アイ〜……」
「あははっ、なんか口癖みたい」
ジェイドは白クマを家に置くことを許可してくれた。
相変わらずジェイドさんは心が宇宙並に広い、と思ったリーシャ。
最初は喋るクマということに驚くかと思っていたが、全くそんな気配を感じさせなかった事にこちらが驚いた。
許可をもらうと早速リーシャは白クマに言葉を教えようと本屋で『これでバッチリ!あいうえお!』という本を買ったのだ。
「なァ、これなんだ?」
リーシャと白クマをじっと見ていたローはリーシャが持って帰ってきた袋からもう一つあった本を出す。
「それはね……あれ!?買い間違えたのかな?」
「だろうな……」
リーシャが買ったのはクマの飼育方法という内容だったのだが、いつの間に入れ代わったのか『これで君もカンフーマスター!〜入門編〜』という本に変わっていた。
「う〜ん、明日取り替えてくるね」
「待て……これは使えるかもしれねェ」
「え?ローくんカンフーするの?」
ぺらぺらと本をめくるローにリーシャは首を傾げる。
「俺じゃねェ。こいつだ」
ローが指を指したのは白クマだった。
「この子?」
「そうだ……その前に名前を決めた方がいいな」
「あ、そうだね」
「ベポ?」
白クマは不思議そうにローとリーシャを見る。
「………」
「………」
「ローくん、私決めた」
「あァ、俺もだ」
「やっぱりローくんも?」
「お前もか」
そしてリーシャとローはお互いに顔を見合わせると一斉に声を出した
「「ベポ」」
二人の声が重なる。
リーシャもローも思ったことは同じのようだ。
お互い同じ名前を言ったことに笑い合う二人。
「じゃあベポで決まりだな」
「うん!これからよろしくね、ベポ!」
リーシャがベポに向かって笑いかけると――。
「アイ!」
理解したようにニコリと返事をした。
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