09
リーシャが正式にこの家に住むことになって、日課になり始めているローとの添い寝をしている時の事だった。
「なァ、リーシャ」
「ん?どうしたの、ローくん」
ローを見ると真剣な顔をしながらこちらを見上げていた。
「お前には……夢があるか?」
「夢?今はまだないかな」
リーシャは苦笑いしながら答える。
「ローくんはあるの?夢」
「ある」
ローはリーシャに抱き着く腕の力を強め、顔を胸に埋めながら小さく呟いた。
「それは、なぁに?」
リーシャが頭を撫でながら言うと、ローは上を向く。
「海賊王……が辿った海を見てみたい」
ローはリーシャの目を見ながら、呟くように言った。
「かいぞく、おう……」
彼の言葉に一瞬、モンキー・D・ルフィが脳裏に浮かんだ。
「リーシャも、可笑しいと思うか……?」
リーシャが反応しないことを怪訝に思ったのかローは悲しそうに言った。
「可笑しくなんてないよ。だって私もワンピースがあるって信じてるから。ワンピースを隠した人の言うことを少しは良く考えたいかなぁ」
リーシャはニコッと笑い掛ける。
「……!―そうか」
ローは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに笑った。
「ふふ……ローくん。もう寝ようか」
リーシャが優しく言うと、ローはまだ嬉しそうにしながら目を閉じる。
「………」
―海賊王にワンピース。
リーシャは。
自分は何故この世界に来たのだろうか?
元の世界に帰る時がくるのだろうか?
考えれば考える程にわからなくなった。
ローが眠っている事を確かめ、ゆっくりと起き上がった。
―ギィ
彼女は足音を立てないように外への扉を開く。
「―わぁ……!」
空を見上げるとそこには満点の星空が広がっていた。
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