05
長い間口づけは続き気付けば酸欠になり口から肺に空気を送り込む動作を繰り返していた。
キッドも同じように息が荒く、しかしこちらをずっと見つめていた。
服を脱がされた状態のまま胸から腰の部分まで外気が触れる。
互いの息遣いが部屋に響き目を反らさない。
「何で助けた」
「…………私は、罪を償っただけ」
「俺を捨てた?」
「………そう」
「嘘をつくな」
ぐっと言葉に詰まり心の中を見透かされていることにギュッと手を強く握った。
そう、リーシャはキッドを捨てようとも捨てたつもりもない。
だが端から見れば捨てたのと同じだ。
「貴方を受け入れられなかった。これで満足?んっ」
強がりをはいた口を再度塞がれ直ぐに離れた。
彼はこれ以上言わせないと言うかのように口を耳に寄せる。
「馬鹿な女だ……てめェは」
それは罵倒ではなく掠れてしまう程の声で切なげに囁かれた。
「望むならこのまま抱いてやる」
「……………キッドは、優し過ぎる……」
望むならと、意見を聞き入れるつもりの男に目頭が熱くなる。
手首の拘束がなくなりそろそろと手を大きく筋肉質な背中に腕を回す。
ずっとこうしたかった。
謝りたくて、殴られたって良かったのだ。
それなのに赦された過去にしゃくりをあげて泣いた。
「ごめ、んなさい、ごめ……っ!」
「お前は俺を見捨てなかった。それが全部だ」
彼が海に落ちた時、後先なんて頭になかった。
襲われても構わないとさえ自分を傷付けていた事にキッドは気付いてくれたのかもしれないと嬉しくなる。
「続き、すんぞ」
「……うん」
ゆっくりと近付く赤い唇に今度は目を閉じ身を委ねた。
クークーと船の上でカモメが旋回しているのが遠出に見えた。
「島に着いちゃったか」
名残惜しいがリーシャは海兵。
今更語るには説得力はないかと苦笑する。
「行くのか」
「あ……はい」
背後から声をかけてきたのはキラーだった。
キッドの事を聞いてきたのでまだ寝ていると言う。
彼はリーシャの首筋に残る赤を目に止めてからそうか、と納得し頷いた。
「キッドから名前は聞いていないが、ある女の話をよくしていた」
「故郷にいた幼なじみ、ですか」
「ああ」
キラーは唐突だったが驚きはなかった。
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