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- ナノ -
 
02


名前や喜びに満ちた声が海の中でも異様に聞こえた。
一般人よりも少しある肺活量で何とかキッドらしき人物を見つけ急いで身体を引っ張る。
装飾品や水分を含んだファーが多少なりとも厄介な物だったが水の中では人間は浮いた様に軽い。
そろりと顔を水面に出し海軍の死角になっている海賊船に隠れた。
正直な所、彼をこのまま海軍へと引き渡す事は簡単だ。
しかし、それはどうしても出来なかった。
幼なじみという関係があるからかもしれない。
海賊船が海軍船から離れていくので鎖に捕まる。
片手に人を抱えたまま鎖を握るのはかなり辛かったがキッドを死なせる訳にはいかない。



「おいっ、頭がいるぞ!」



誰かが叫んだ。
やっと鎖にしがみつく必要はなくなったともう何年も浮かべていない笑みを横で気を失っている男に向けた。



「よ、かった……」



意識を手放した事を自分でも理解したが、後は誰かが彼を引き上げてくれるはずだとぼやける思考がブラックアウトした。




目を覚ますきっかけとなったのは扉を開く音。
フッと瞼を上げれば見慣れない天井が見え横を向けば殺戮武人が立っていた。



「……ユースタス・キッドは?」

「……………………眠ってる」



違う部屋に居るのかキッドの姿はなかった。
キラーの言葉には質問したいという感情が入っていたのでもう口を開く気はなくなる。
せめて精神がおかしな海兵だと思われて直ぐにでも去りたい衝動に駆られながら起き上がった。
なぜリーシャまで助けられてしまったのかは疑問だったが取り敢えずベッドから足を床に付けると靴を探しベッドの下に見つける。
靴を取り出し海兵の制服の上着を羽織って立ち上がった。



「今は島?」

「いや、明日には着く」



肝心な事を聞いていなかったので尋ねれば計算外の言葉が返ってくる。
このままではキッドと鉢合わせをしてしまう。



「私のお願いを聞いてもらえますか」

「善処する」



危害を加えないと判断したからか好感な答えだった。
これからは誰とも顔を合わせないし話もしないように伝えて欲しいと言えばキラーは感慨深げに頷く。



「私は、海賊とは馴れ合いたくないので」

理由としては妥当だが海賊を助けた人間が使う言葉ではないな、とリーシャ自身も変に思えた。


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