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01


「好きだ。俺と一緒に来い」



彼はいつも傍若無人で自信に満ちた目をしていた。



「明日、返事するから」



そうしてリーシャは誰にも告げず島を出た。
告白の返事も勧誘の答えも伝えないまま。
キッドが好きだと言うまでは嬉しかった。
けれど、海賊になるという言葉を告げられた時には既に怖じけづいてしまっていたのだ。
そんな自分に嫌気がさし戒めに己を罰する為に海軍へと入隊したが、今現在でも彼を忘れる事など出来なかった。
罵られて当然だ、殺されても当然だ。
幼なじみのくせに受け入れられなかったなんて恥ずかしい。
それなりの月日が経ち、リーシャは平海兵のままだったがそれでも不満はなかった。
あるとすれば海軍の組織に対してくらいだろうか。
所詮大した力もない女が口を出したってハエのように叩き落とされるだけろう。
軍艦程度には乗船出来るようになり命を落とす確率は以前より下がった。
巨大な軍艦を粉々に出来る人間など数少ない。
その中で強い海賊が現れたならば運が悪いと諦めるだけだ。



「この度、ユースタス・キッドが近辺の島に停泊しているとの通報があった」


自分よりも地位が上の正義の文字を背負った上司が島を出航した時を狙い逮捕すると宣言した。
故郷で共に育った人間が今や億越えの賞金首とは言い得て妙だ。
殺戮を行う海賊になってしまった男と対峙する時が来ようとは、やはり罰が当たったのだろうと自嘲した。
二日後の朝、海兵達は軍艦に乗って海賊達が通る道を確保して待伏せる。



「大砲よーい!」



ぐわんぐわんと金属の擦れる音。
リーシャは後ろの隊列に並び戦の時を待つ。
やがて不穏にはためく海賊旗が海賊船と共に現れた。
相手も当然分かっていると思ったのは大砲の発射口がこちらに向いていたからだ。
ドン!と三隻ある海軍の軍艦が大砲を撃つ。
水しぶきが派手に起こり海賊と海軍の攻防が始まった。
最初は優勢に見えた海軍の武器が敵の船に飛んでいくという光景がたった今目に写っていて周りも開いた口を塞げないようだ。



「能力者は海に落とせ!」



その掛け声と共に海兵達の士気は上がり我こそはと船長の首を取りに行く。
戦いが数十分続き圧倒的に海賊が有利になっていて、相手が能力者というのもあり三隻あった軍艦が二つ黒い煙を出していた。
慌てる海兵を見ていた時、紅い塊が海へ投げ出されるのが見え咄嗟に自分も飛び込んだ。


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