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推測された地図は、ログが示す島の宝の在りかが関係しているのではないかという話なので、益々船員達のテンションが上がったのは言うまでもない。
リーシャも宝探しをしたことがないので、一度体験してみたいと少なからず興味はあった。
問題はローが降りる事を承諾してくれるかどうか。
今回は三十パーセントの見込みしか見い出だせなく、諦めが早速胸を占めた。
しかし、予想は外れ、スルリと気前良く許可が下りたのは本当に驚くしかない。
「なんで?いつもは……渋るのに」
「ピアス付けてるしな」
「……盗聴器とか仕込んでる?」
「してねェ」
疑う眼差しで問うと否定したが、リーシャはいまいち納得出来なかった。
ログが示す島に着いたのはそれから一週間後。
程々に大きな島で、娯楽施設などで観光地としても発展している所だった。
だが、やはり此処でも問題を抱えている事が判明した。
「貴族?」
「ああ。あんたらも用心しな。下手に関わるとロクな事はないぜ」
「……確かにあれは厄介な感じだな」
お酒を片手に飲む同業者に聞いた話では、金をたくさん発掘しているこの島は確かに繁栄しているが、裏では黒い事業も行っているという。
それをまとめて請け負っているのが島の中央に君臨するお城とも豪邸ともつく場所に済む貴族らしい。
家主の名は『ビアン・レクイエ』。
庶民から貴族までのビジネスを幅広く手掛けているという話だ。
ローはウォッカを口にしながら静かに話を聞いていて、その横でリーシャは規模が大きな話に気後れしながらも理解しようとしていた。
(お腹空いたなぁ)
話の腰を折りたくなかったので敢えて口には出さずにいつ終わるのかと考えつつ、メニューを見遣った。
「何が食いたいか選べ」
「あ……うん……」
パッとメニュー表を横から取ったローがリーシャの目の前で開いた。
気付いてくれた事に驚きながらも、今のうちに頼みたいものを決める。
だが、どれも美味しそうで特にそのうちの二つが迷った。
「俺はこれにするからお前はこれを頼め」
「……ローって隠れ紳士だったんだね」
「くくっ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろ」
「意味が……違和感ある」
「俺も今思った。ウエイトレス呼べ」
まだ笑いながらローが言うので、リーシャはウエイトレスに目を向けた。
「あんたら夫婦か?」
「恋人を遂に越えたなキャプテン!」
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