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本当に聞いた事があるような、ないような記憶。
しかし、勘違いかと洗濯物を再び干す作業に戻る。
不意に上を見上げ、昔に読んだ『うそつきノーランド』の本の内容が脳裏を掠った。
「空島……か」
確かに実在する島。
リーシャはモクモクと空を漂う雲を見つめた。
コツリと足音が聞こえ意識を戻す。
「空島なんて久々に聞いたよ」
「バンダナくん……いつから居たの?」
「んー?……秘密」
「秘密って」
苦笑するとバンダナは先程のリーシャと同じように空を見上げた。
「リーシャちゃんはさ、空島あると思う?」
「……うん。きっとある」
どう答えようか迷ったが、言い淀む必要もないだろうと頷く。
すると、バンダナは目を少し細めてこちらを向いた。
「信じるって綺麗だよねぇ」
「え?」
「リーシャちゃんが信じるなら俺も信じる」
「……ありがとう」
「えー?お礼なんていいよ」
「ふふ、何となく言いたくなったから」
「そっかー」
バンダナもニコッと笑う。
すると、またもやシャチの叫び声が聞こえ二人は顔を見合わせると甲板の反対側へ移動した。
今度はどうしたのだろうとシャチの様子を見に行けば、やはり釣竿を片手に騒いでいた。
「すっげー!」
「金だ……」
「本物かァ?」
と、人だかりが見事に出来ていたので、動向を見ていればペンギンも居て、ビンを持っていたので波乱の予感を感じた。
「これは地図だな」
「ち、地図!?たた、宝のか!」
「うおお!やべェな、宝か!」
テンションが上がる船員達にリーシャは内心、やはり何かが起こるのかと未来を想像しローの表情が浮かんだ。
さてさて、船長はどんな判断を下すのか。
「何してる、ああ……やっぱりお前かシャチ」
「船長!なんですかその目っ。別に俺はただ釣りをしてただけですよォ……」
「ある意味強運の持ち主だよな」
「「「うんうん」」」
一人の船員の言葉に一同が頷く。
「くっ、お前ら薄情だな!」
「まぁまぁシャチくん。取り敢えず地図を見ようよ」
リーシャは収集がつかなくなる前に話題を変えると一気に全員の意識は地図に向かった。
ローもペンギンから詳細を聞きながら紙を見ているのでホッとする。
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