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保守を優先する小動物が海に流されるなんて失態を犯す様が想像出来なくて、つい唸ってしまう。
ピクピクと耳を揺らしてつぶらな瞳をこちらに向けるうさぎと目が合った。

「………」

「まさか、飼いたいなんて言わねェよな」

「言わないよ。次の島に連れていったらさよならするから」

「本当か?」

「ローくんこそ、この子を毛皮にしないでね」

「クク……新しい帽子が欲しくなった」

「あげません」

「別にうさぎとは言ってねェ」

クツクツと笑うローにリーシャも笑みが漏れた。
うさぎは鼻をヒクリと動かして首を傾げている。
ゆっくりとうさぎの背中を撫でるとフワフワで気持ち良かった。







島に着いたのはうさぎをシャチが釣った翌日。
どうやら、近さ的にこの島から流れてきたかもしれないとペンギンが言った。
確かにそれなら海に流されて生きていた意味が分かる。
春の気候と同じ無人島。
シャチもうさぎを見ながらお別れだと少し淋しそうに草食動物に喋りかけていた。
草木が生え、草原に満ちた地に白いうさぎを放つ。
うさぎは手から離れると後ろを振り返ることなく、広い場所へと走り去った。

「元気でいて、うさぎさん」

「呆気ないな」

ベポが少し怒るように言う。
リーシャはそれで良かった。
自然界の動物らしくていい。

「この島のログは……」

「ログはない。ただ寄り道しただけだ」

「え?」

ログの溜まる日数を聞けばペンギンがそう説明したので首を傾げた。
つまり、うさぎとリーシャの為に寄ってくれたらしい。
もう船員達も船にぞろぞろと帰っていく中、ローは一人こちらを見て立っていた。
駆け寄ると短く「帰るぞ」と踵を返す。
寄り道してくれた事に礼を述べると彼は何も言わなかった。
嬉しい気持ちでいっぱいのリーシャはローの後に付いていくだけ。

(優しいなぁ)

頬が緩んだ顔は誰にも見られずに済んだ。



***



ある日、甲板で洗濯物を干していると船員達の会話が聞こえてきた。

「デッドエンドレース?」

「ああ、しかもその島の近くには“海賊処刑人”が出没しているって噂だぜ」

「今時だな」

思わず手を止めた。
記憶に微かな引っ掛かりを感じ、頭を捻る。

(デッド、エンド……レース?)




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