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頭を下げて「お世話になりました」と言うセンナにハートの海賊団の面々は照れた表情で手を振る。
リーシャとローとベポは彼女を送り届ける役目として一緒に付いて行く事になった。
何故ローも来るのかと聞くと「これも条件だ」とエドとの会話を語る。
彼とどのような話をしたのかは分からないが、ローが居るのなら安心出来た。
追っ手に見つからないようにとリサーチしておいた道を行く四人。
徐々に見えてくる定期船にホッとしながらエドを探す。
こちらに軽く手を挙げる男性の姿に一番早く動いたのはセンナ。
その駆ける後ろ姿は安堵と嬉々を感じさせた。
恋人達が再会を果たす様子にリーシャも涙ぐむ。
「お前は涙脆いな」
「だって、あんまりにも綺麗だから……」
「綺麗……?」
ローは薄く笑う口元を疑問で形作る。
彼はこういった感情移入には理解し難い人だったと思い出す。
「もしかしたら……一生会えなくなってたかもしれないって思ったら……ね」
「……まァ、分からなくもねェな」
「え?」
切り返しが「そうか」と言う予想を越え、意外な言葉を聞いた事に驚いた。
ローはこちらを見て「なんだ?」と言ってきたが慌てて首を振って前を向く。
視界の先には手を繋いでこちらに来るセンナとエドが見えた。
しかし、ローは何を思ったのか首を横に振り「行け」とジェスチャーで先を急がせた。
お別れは先に済ませていたので、二人に手を振るだけにして、口を出す事はしない。
ベポも二人にふわふわな手を振って船が行くまで見送り、センナ達は頭を下げて何度も口の形を「ありがとう」と動かして笑っていた。
船が小さくなり、地平線へと消えて行くのをリーシャ達は見送る。
最後には幸せそうに二人は笑い合っていたので、祝福と目尻に感じる熱をずっと感じながら祈った。
次の人生を歩む二人を想像して浸っていると、視界にローの手が写る。
「帰るぞ」
「うん」
ローの手を取ると、ベポが反対側に移動してきたので白い手を握った。
白熊は一瞬びっくりしたように目をパチパチと動かすと、歯を覗かせて照れたようにはにかんだ。
「俺、もうくたくただ」
ベポは照れを隠す言葉を述べると、すかさず頷く。
「船に帰ったら皆が話しを聞かせてって眠らせてくれないかもね」
「ククッ……海賊が色恋沙汰を聞きたがるなんて世も末だな」
ローは冗談を含んだ優しい声で笑みを浮かべた。
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