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シャチが、話している最中に入ってきたバンダナがペンギンの言葉にへらりと笑う。
「狼さん?」
「密輸組織」
バンダナは訳知り顔で答える。
リーシャは初めて知った事実にシャチ達を見た。
ベポも聞いていたらしく何だか一人だけ外にいるような寂しい気持ちになる。
ペンギンがフォローするように「船長がお前の為を思って黙っていたんだ」と言うが、やはり自分もハートの海賊団の一人であるし、何よりローとは幼馴染みなのだから複雑だ。
ベポはそんなリーシャの気持ちを察したのか肩を叩いてくれた。
決して、守られて嬉しくないわけではない。
ただ、自分にも頼るだとか、何か言って欲しい。
ローはいつもそうだ。
勝手に、部屋に鍵を付けるし、買い物だって誰かとでなければ行けない。
それは、安全面や誘拐や人質にリーシャがされてしまう危険性を配慮して行動している事は理解しているのだが。
分かっているからこそ、話して欲しいのだ。
この気持ちを隠しておく理由はないので、後で部屋に言った時に彼へ伝えようと思う。
「皆が私を守ろうとしてくれているのは分かった。けど……私にも選ぶ権利があると思う……」
例え、異世界の人間でも。
居てはならない存在であっても。
「ありがとう。私、ローくんの所に行ってくるね」
「リーシャ……」
ベポが呟くと笑いかけた。
シャチもペンギンもバンダナも皆、自分達の船長を敬愛する気持ちがよく伝わってきたし、リーシャも嬉しい。
「また明日ね。お休み、皆」
手を軽く振って四人に見送られながら部屋を出る。
ローとリーシャの共同で使用している、謂わば半同棲用の船長室へ行って扉を叩く。
「入れ」
「話、終わった?」
「ああ。それより遅かったな」
「うん。ベポ達と喋ってて遅くなったの」
「フフッ、成る程な」
ローは寛いでいたソファの場所を一人分空けるとリーシャはそこへ座った。
取り敢えず先程ペンギン達に言った言葉を彼に伝えようと口を開く。
「ローくん、あのね」
「やる」
「え?」
差し出された手にはマカロン。
ぱちくりと目を開けるとローはリーシャの口へマカロンを入れる。
反射的に噛んだ口内はほんのりとした風味を感じ取った。
もぐもぐと動かしていると彼はクスリと笑って自分の指先をペロッと赤い舌で何とも官能的に舐めた。
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