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「も、もう終わりっ」

赤い顔を隠すように言えば、視界の端でローの肩が揺れているのが見え、笑っているのだろうと思った。
彼はリーシャを宥めるように「次は俺が――」とチョコレートソースを手に取りパンケーキにかけるとそれを口に近付けてくるのでさすがにそれは、と不意打ちの仕草に手を振る。
それでも尚、口元から離れない。
その時、ローの持つ手が頬にズレたのが見え、気付いた時にはチョコレートソースが頬に付いていた。

「あ」

「手が滑った、悪ィ」

と、完全な確信犯の行動だと分かる顔で謝る。
言葉を失っていると徐に彼が動き、素早い事にペロリと頬を舐めてきた。

「っ!」

「お詫びだ」

「いや、お、お詫びって……」

リーシャが得をする事でもないのに。
艶かしくも頬に付いていたチョコレートを口で味わう姿に、もう何も言えなかった。



***



「おわああァ!」

例の如く叫びを上げた、シャチの声にまたかと飲んでいたお茶から口を離す。
ライラの時も同じような事があったので、今度はどんな事件が起こったのだろうか。
隣でコーヒーを飲んでいたローは特に反応する事はせずに新聞を読んでいて、扉の向こうから数人もの慌ただしい足音と共に「船長ー!」という叫び声が部屋に入ってきた。

「……なんだ」

「ウサギが釣れましたァ!見てくださいっ」

「う、うさぎ?」

海で釣れたのか、と信じられない気持ちでシャチの胸を見ると、白い毛並みに耳があるうさぎが確かに居た。
濡れているのでプルプルと震えている。

「あ、お風呂沸かしてくる」

「あ?風呂なんて必要ねェ……」

「駄目駄目!震えてるでしょ!」

ローが何か言う前にシャワールームへ足早に向かった。




温かいお湯を沸かすと、シャチからうさぎを受け取り生温い人肌程の体温で小動物を小さい桶に入れ、暫くすると震えも止まったのでホッとした。
お湯からうさぎを出してタオルで拭くと部屋に連れていく。
ソファで寛いでいたローがこちらを見ると口を開いた。

「そこまでするのか」

「うん。草食動物だし」

「ベポは?」

「家族」

怒っているようではなかったので近くに座る。

「何で海にいたんだろ」

「流された」

「うさぎが?うーん……」




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