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お言葉に甘えて食堂に向かうと、いつかの光景と同じようにセンナが船員達に囲まれていた。
それを見ていると横からバンダナが歩いてきて、声をかけてきた。
「人気だねェ」
「うん。ライラさんの時もあんな風に囲まれてたよ」
「姫様の時も?……へェー」
声が低くなったバンダナは目が笑っていない表情で船員達を見る。
それに気付いたシャチ達は、得体の知れない悪寒に身体を小刻みに震わせた。
「それはそれは……お礼しなくちゃねェ?」
「ふふっ」
バンダナの制裁の言葉に睦まじく感じた。
正面にローの姿を見つけるとリーシャはそこへ向かう。
横に座るとローがやっと来たか、とばかりにこちらを見た。
「あいつらやる事変わんねェな」
「そこが良いんでしょ?」
「ククッ……さァ、どうだか」
面白そうに笑う船長にリーシャも微笑む。
程なくしてカレーが運ばれてきたので船員達の興味はそれに集中した。
リーシャがセンナにこっちで食べないか、と誘ったのだが、ローを気にしながら首を振ったので諦めた。
「そんなに身体が頭に残ったのか?」
「当然だよ。見慣れてない人には刺激が強いんだから」
苦笑しながらスプーンを動かす。
夕食が終わると男性陣は大浴場へ移動したので、リーシャとセンナの二人が残った。
勿論ベポもオスなので男扱いである。
「一気に静かになったわね……」
「いつもこんな風ですよ。見張りはいますから安全です」
「そうなの……ねぇ、リーシャさん」
「はい?」
センナが恥ずかしそうに口を開く様子にリーシャは首を傾げる。
「船長さん、見た目と違って……その、た、逞しい……のね」
「え?……ああ。半裸の件ですか。確かに鍛えてますからね」
淡々と答えるリーシャにセンナは微かに目を見開く。
「貴女達……確か恋人同士よね?」
「あ……はい」
(嘘なんだけどなぁ)
違うと否定すれば後からローが色々と言ってくるので、彼との口裏を合わせる。
内心焦るリーシャに彼女は続けて話し続けた。
「おまけに……彼、素敵なのね」
「そうですか?ありがとうございます」
身内が褒められて嬉しかった。
胸がじわりと温かくなる思いに笑みを返す。
そこでセンナの恋人であるエドの事も気になり、質問してみた。
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