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「もしもし……あの−−」

『リーシャちゃん……かい?』

「はい……お久しぶりです。元気でしたか?」

当たり障りのない言葉に内心苦笑したが、ジェイドは柔らかい声で対応した。

『ローからたまに連絡してくるから平気だよ』

「え?ローくんが?」

『知らなかったかい?あはは、ローはあまり言いたくなかったようだね』

「そうですね……」

本当に知らなかったので驚愕の二文字しか浮かばない。
ちらりと彼を見遣ると、普通の表情をしていた。
パラパラと本を読んでいてこちらを見る気配はない。
再度ジェイドから声がしたので耳を傾ける。
懐かしくて少し瞼が熱くなった。

「ジェイドさん、私……元気ですから」

『ああ。何よりだ』

「また、電話しても……良いですか?」

『勿論だよ。リーシャちゃんもローも、私の家族だ』

胸が温かくなって、ギュッと手を胸の前で握る。
リーシャは一通り話し終えると受話器を置いた。
また話しは後日ゆっくりとしよう、ということになったのだ。
ローとは思っていたよりも頻繁に連絡を取り合っていたようで、代わる必要はないとジェイドは話しを終わらせた。
電話が切れると先にローが問い掛けてきたので、リーシャは懐かしさと嬉しさと少しの寂しさの余韻に浸りながら答える。

「ジェイドさんがローくんにまた連絡してほしいって」

ジェイドと電話出来て嬉しかったと述べると、ローはそうかと素っ気なく返してきたが、口元は密かに上がっていた。
温かい感情が沸き上がる中、リーシャは少し前から感じた疑問を口に出す。

「どうして今までジェイドさんと連絡してる事言ってくれなかったの?」

盗聴の恐れが無い以上、ジェイドと話せない理由は思い当たらない。
そう言うとローはバツが悪そうに目を逸らしながら口を閉じた。
ボソボソと声が聞こえリーシャは近寄る。

「お前が、帰りてェって言うかもしれねェだろ……親父と話したら」

「……そっか」

ローの気持ちを感じ取るとリーシャはスッと目を閉じ、開ける。

「ジェイドさんと電話出来るだけで私は十分だよ」

「そんなわけねェ」

「あるよ。ローくんもベポも居て。クルーの仲間がたくさんこの船に居るから」

「………」

ローはリーシャをジッと見つめる。

「……こっちに来い」

「ん?」




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