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ローと扉越しに会話すると、扉を開けた。
待っていたのは小瓶を掲げる褐色の手。
どうやら開けて直ぐに渡すつもりで前に立っていたのだろう。
中を開けてみると茶色い丸いキャンディがコロコロと入っていた。
香りで何か分かったので彼に尋ねた。

「これ、コーヒーキャンディ?凄く美味しそう」

「食べていい」

「いいの?」

「店の店主がおまけとか言って渡してきたお菓子だからな」

一粒手に取ったローはリーシャの口へキャンディを誘導するので薄く口を開けた。
コロンと口内へキャンディが入ると直ぐにコーヒーの風味が広がる。
ふっと口元を緩めてローを見ると、彼はジッとこちらを見詰めていた。
どうしたのかと聞くと、ローはニヤッと悪い笑みを浮かべ、キャンディの小瓶を差し出してきた。
食べさせろと言うローに一瞬困ったが、考え直せばそこまで嫌には感じなかったので一粒手に取る。

「はい」

「……味気無ェな」

「コーヒーの味はちゃんとするよ?」

疑問を抱きながら指摘しても、ローは半眼のまま溜息をつく。
何か間違ったかと思ったが、彼はそれ以上何も言わなかったので自然と無言になる。
カラッと飴が口の中で音を立てるのを聞いていれば、小さな頃を思い出した。
ローと同じ年齢の子供達がよく飴玉やお菓子を分けてくれたものだ。
リーシャはお返しに、家で焼いたクッキー等を渡して喜ばれたし、いつもその時は隣にローがいて、一番の焼きたてをあげていた。
彼はふとした時にも、いつでも近くにいる。
それが当たり前に思える自分は凄く幸せなのかもしれない。

(また日常に戻れるのかな……)

異世界が日常だと思うと変な気がしたが、それでもリーシャの故郷はジェイドが居る島だ。

「ねぇローくん。ジェイドさんとは連絡取れるの?」

「……お前が望むならしてもいい」

「海軍に盗聴されない?……私達の居場所とか知られない?」

「妨害用があるから問題ねェ」

「そんな電伝虫もいるんだね……」

「あんまり知られてねェ。海軍は独り占めしたがりだからな」

ローの皮肉に嘲笑う瞳がリーシャを写した。
直ぐにいつもの表情に戻り、電伝虫を手に取り受話器を上げる。
ほら、と手渡されると耳に当てた。
数秒すると「はい」と懐かしい声音が聞こえたので一瞬息を呑む。
何を話せば良いのかと思い迷ったが、息を吸って気持ちを落ち着かせた。




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