04
本当にわからないのだからそう答えるしか出来ない。
ローは二度目の嘆息をついた。
(本当に変わらないなぁ)
嬉しくて、でも顔を隠す為にベッドへ仰向けになれば彼が慌てたように「おい」と投げかけてきたので顔だけを向けた。
「寝るんじゃねェ」
「皺になっちゃうから?」
「違ェよ」
バツが悪そうに目を逸らしたローに内心ハテナが浮かぶ。
「あ、お昼寝する?」
「はァ……?なんでそーなるんだよ」
ローに飽きれた表情を見せられ眠たいわけではないのだと理解したが彼に向けて腕を伸ばし、最近はあまり口にしなかった言葉を唱えた。
「おいで、ローくん。添い寝してあげるから」
「っ」
ローが息を呑んだ理由を知らないリーシャは微笑む。
小さい舌打ちと、理性と格闘している男が可哀相に思える程に。
「十分だけだ」
「うん。私も眠くなった……」
ローがギシリとベッドに 座るのを見たリーシャは少しずつウトウトとしてきたので睡魔に身を任せ瞼を閉じる。
良い夢が見られそうだ。
***
「襲うぞ……」
眠った彼女を見下ろして呟くローは身体がどっと疲れた気がする。
無意識に煽るのだからタチが悪いと帽子を深く被った。
最初から寝るつもりはない。
ローは彼女を見つめ身体を屈める。
ちゅ、と唇が一瞬触れて離れた。
手を頬に寄せ寝顔を撫でて体温を感じとる。
「穏やかな顔しやがって」
幸せそうにこちら側に寝返りをうつリーシャに頬が緩む。
どんな女と過ごすよりも彼女と過ごす日常が何よりも好きだ。
春風が吹くように笑う表情も髪を耳にかける仕種も、お風呂上がりの濡れた髪とほんのりと色付く頬。
全てはローの心臓を悩ませ言い表せない感情を掻き乱させる。
困った表情をみると更に困らせたくなるのだから重症だ。
「記憶なんていらねェんだよ……」
記憶喪失のまま家に来たリーシャは今だに記憶がなくなったままらしい。
どちらにせよ関係ないと思い、蘇る事は寧ろ望んでなどないのだ。
ずっと記憶なんて必要ないし、ずっとローの隣にいればそれで――。
「キャプテン」
「どうした」
「後一時間したら島に着くよ」
「わかった」
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