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「リーシャちゃーん、こっちこっち!」



名前を呼ばれ橋を見ると、金髪にバンドを頭に嵌めた青年が手を振っていた。



「バンダナくん!どうして、ここに……!」

「助けに来たんだけどえらい騒ぎになってたからリーシャちゃんを探しに来たんだよー」



相変わらずこういった場面でも調子を崩さないバンダナに安堵する。
彼が居るということはローも居るのだろう。
幼なじみの行方を尋ねると一先ずここから出ようと言われ、腕を引かれて走る。
先程の怪我人が脳裏を過ぎり、無意識にもう一つの小屋を見遣ると、そこにいた海賊達も同じように慌てて逃げたのか扉が開けっ放しで中が窺えた。
誰も居ない事に良かったと思うとバンダナに早くと足され前を向く。
やがてツリーハウスから離れると木を見上げる。
炎が下から平らに燃えていて木を焼くのが見え、バンダナが落ち着いた頃を見計らい船へ先導してくれた。
途中、彼に慌てて探したのだと言われ申し訳なく思った。






***








「あ、あ……!」



ツリーハウスが燃えていく様をただ眺めている事しか出来ないマッドニーは、突然現れた同じ賞金首の男に驚いていた。
自分よりも一千万ベリー下の、長い刀を担ぐ姿は正に悪魔の化身。



「てめェらは俺のもんに手を出した」

「ナ、“ナイチンゲール”の事か!そいつならただ治療させる為に」

「“ナイチンゲール”?」



マッドニーの言葉を遮り何が可笑しいのか、笑みを浮かべるトラファルガー・ロー。
その目には残虐な殺気が燻(くすぶ)っていた。



「へェ?誘拐した上に治療……十分過ぎるよなァ?」

「な、何がだ」



部下もローのただならぬ雰囲気に呑まれ動く事さえ出来ないようだった。



「てめェらは運がいい」



ローはニヤリと口元を吊り上げ、手を前に動かした。
意味が分からない言葉に全員困惑と恐怖が競り上がる。



「たった今準備が終わったところだ……さて」



すらりと長刀が抜かれる。



「オペの時間だ」



青白いサークルに囲まれマッドニーも部下もパニックに陥る。



「気を楽にしろ、すぐに終わる」



悪夢の時間が始まった。
逃げられない、助からない。
治療させる為だと、たかが女一人を誘拐する事だと軽い気持ちで支配力を振りかざしたのが悪いのかと、マッドニーは駆け抜ける走馬灯のような考えに、行く末の結果を悟る。









全ては死の外科医の怒りを買ったことなのだと。




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