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向こうから焦燥の声が聞こえた瞬間、ローはリーシャを連れて建物の影に引き込む。
いきなりの不可解な行動に混濁していると泥棒と思われる、財布を手にした男と貴族の風貌の男が通り過ぎた。
彼は二人が行った事を確認すると、再び何もなかったかのように表へ出た。



「どうして建物に隠れたの?」

「貴族は大体難癖を付ける奴らが大半だ」



あのまま貴族の男性の視界に自分達が入り込めば巻き添えになっていた可能性が高かったというらしい。
そうなると文句どころか何をされるか分からないから隠れたそうだ。
ローの判断力には毎回驚かされるが財布を盗んだ人間にも驚いた。
貴族ばかりが有利に立つと思えば、立場ややり方は違えど優位に立つ順番が逆の事もあるのだと世の中を知る。
ローに足され歩き始めるとそればかりが巡回したので上の空の状態になってしまった。



「また考え事してるな」

「今度は人じゃないよ?」

「それでもルール違反だぞ」



ニヤッと悪戯に笑う彼に考えるのは止めようと頭を切り替えた。
先程、説明していたフラワーガーデンに連れて行ってやる、と言われ気持ちが浮足立つ。
脳内に色んな考えがちらついたが頭を切り替えなければとフラワーガーデンに意識を向ける。
目的地に近付くにつれて花の香りが鼻腔を刺激してきた。
彼は平気なようで普通だった事に安心する。
我慢している可能性もあったが自分の感情に忠実なローに限ってないだろう。
フラワーガーデンに着くとちらほらとカップルや夫婦や子供連れなど様々な層がいた。



「迷路になってるみたい」

「迷いに行くか」

「最初から確信的に行動するの?楽しそうだね」

「迷路だからな」



ローの楽観的趣向にリーシャも段々と楽しみになる。
入口は薔薇のアーチから始まり、緑で統一された植物の囲いは綺麗に手入れされていた。
話しや映像では知っていたが体験するのは初めてだ。
観光客を楽しませる仕掛けがたくさんありずっと笑みが絶えなかったし、行き止まりになるとローが突っ切って行こうとしたので、微苦笑しながら反対側へ引っ張る事もあったので抜ける頃には思いの外時間が経過していた。
最後の出口には花を持つ少女に一輪渡され、予想外のサプライズに嬉しくなり受け取る。
ローが船に持って帰ってもいいと言うので遠慮なくさせてもらおう。
幻想的な場所に行けた事で気持ちがほくほくとなったまま、その日を終えた。




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