03
その会話に聞き耳を立てるのは幼馴染みである男。
「まだ洗濯物なんてやってんのか。んなもん他の奴に任せろ」
「まだって……私が洗濯物しなかったら皆なかなかしないんだよ?それに私のする事がなくなって落ち着かないし……」
「アカギレを起こしたらどうする」
「薬塗るし大丈夫だって」
ローはリーシャの言葉に有無を言えなくなりグッと眉間に皺が浮かんだと思えば、突然腕を引かれる。
「あっ、ローくん!」
「くん付けするなって言っただろ」
抗議するリーシャを尚も引っ張り船内に連れていくロー。
何度か目のため息をつき渋々足を動かした。
***
「あーあ、船長無理矢理連れてっちまった……」
「いつまで経っても船長室に来ないから居ても立ってもいられなくなったんだろ」
苦笑する二人にベポは首を傾げている。
「キャプテン、昔はあんなに強引じゃなかったはずだけどな……」
ぽつりとした呟きは誰にも聞かれる事はなかった。
***
ローの自室でもある船長室に連れて来られたリーシャはベッドの脇にちょこんと座っていた。
部屋に入るや否や、彼に「座れ」と短く言われたのだ。
「ローくん」
「………」
「怒って、る?」
「そんなわけねェ」
と言ってはいるが絶対に怒っているだろう。
何が彼の気に触れたのかよくわからない。
リーシャは考えてみるが家事をして怒るなど、いまいち確信に欠けた。
もう一度そっとローの顔を覗き込むと目がガッチリと合わさる。
その瞬間、軽いため息と肩を落とす姿に諦めたのだとクスリと笑うとなんだと目が語りかけてくるので「何でもないよ」とごまかした。
ローは昔から自分に甘いように感じるのだ。
特にこうしてああして、とは頼んでいないのだが。
しかし、そんな変わらない“幼馴染み”に安心もする。
贅沢かもしれないが船長としてのローよりも共に育ったトラファルガー・ローを見守りたいのだ。
海賊になってからも気遣いや過保護は健全で昔よりも藍色の瞳をハラハラさせている事は案外悪くはないと思う。
「ごめんね」
「何に対してだ」
「んー、わからないけど謝らないとって思っただけだから」
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