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クレープ屋でローがリーシャに何を食べるか尋ねてきたので「フルーツ」と言うと店員へ伝えてくれた。
店員がクレープを作ってくれている間、ローに聞きたい事が思い浮かぶ。
「ローくんは、デートしたことある?」
「……さァな」
「照れなくていいんだよ?」
「照れてねェ……デートって呼べるもんはないだろうな」
「ないの?」
「ない。ほら、来たぞ」
ローに足されクレープを受け取る。
財布からお金を出そうとすると視界の端に手が通り、目で追うと店員の手に小銭が落とされるのが見えた。
バッと隣を見るとローが何もなかったようにリーシャの手を引く。
財布を持った手がそのままだったが、ローに掠め取られた。
「あっ!クレープ代返すよ……!」
「デートだろ」
「あくまでも仮だってば」
「うるせェな。デートは最後までデートなんだよ」
「何それ……じゃあ」
「途中でや止めることは出来ねェぞ」
ローの絶対的な言葉はもう決定事項なので諦める。
最近諦めることが多い。
内心溜息をついていると目に風船が写る。
大人が子供に配っているようで、小さな子供が一生懸命貰おうと手を上げていた。
その横ではうたた寝しているお爺さんがいたので平和だと頬が緩む。
「クロコダイルが称号剥脱たァ驚いたな」
「ああ。おまけに一つの国で反乱を起こしたんだってな」
「……!?」
リーシャは微かに記憶に引っ掛かった名前にピタリと止まる。
「どうかしたか」
「っ……ううん、何でもないよ」
クロコダイルについて聞こうか迷ったが言わなかった。
もう捕まってしまった人間について追求しても何も分からないだろう。
ルフィがクロコダイルを倒した事は記憶に薄く薄く残っていた。
−−グイッ
ローが突然手を引っ張ってきたのでつんのめる。
ポスッと胸にダイブすると上を見上げた。
不機嫌に顔を顰(しかめ)る彼がリーシャを見つめる。
「デートはな、相手の事しか考えないのがルールなんだよ」
「ローくん、そんな事聞いた事ないよ?」
一応、元の世界でも十九年生活したのだから男女のデートの事はテレビや雑誌で知っている。
相手の事を考える意向はわかるがローの言葉に思わず笑みが零れた。
「聞いてんのか」
「うん。聞いてる」
「……行くぞ」
手を再び引かれて街中を歩き出す。
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