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夕飯に出されたのはマーマレードにオレンジを駆使したサラダ。
オレンジ風味のメニューが並べられ、思わず凄いと呟く。
それにユリアは照れながら弟達に食べるように足す。



「どうしてお姉さんは家出してきたの?」

「んー……ローくん、トラファルガー・ローって人が何も私に教えてくれないから、かな」

「喧嘩した?」

「初めてね。新鮮で最初はこれでいいんだって思ったけど……今は凄く後悔してる」

「何で?向こうが悪いんでしょ?」



リーシャはユリアの言葉に曖昧に頷くと胸の内を話す。



「もし、私に何かあったら。もし、彼に何かあったら……謝る事だって出来なくなるでしょ?一生後悔を背負って生きていくくらいなら……私が悪くても仲直りした方がずっといいと思うんだ」

「そういうものなの?」

「うん」



特に海賊という職業柄、死と生は背中合わせなのだ。
それに、リーシャがいつ元の世界に帰されるのかさえあやふやである。



「お姉さん、悲しそうな顔してる」

「え?」

「勘違いかもしれないけど、そう見える」



ユリアの顔を見ると悲しげに顔を顰(しかめ)ていたので、どう返事を返せば良いのか分からず渋る。
自分は何故悲しげな顔をしているのかが理解出来なかったからかもしれない。
いつか自分がロー達といられなくなるかもしれないと思うのは、仕方ない事だと思う。
ローは船長で、ベポも強い。
リーシャだけが足手まといになるのが嫌なのだ。
おいて行かれる恐さを確かに知っているから。
おいて行く立場に立つ事は覚悟しているのにと、弱い自分。
ユリアにはわかってリーシャにはわからない感情をどうすれば良いのかなど、解決策は全く思いつかない。
悩む頭を振りかぶり、オレンジのサラダを口に入れた。









三日月の夜、リーシャはユリアの隣で弟達に挟まれながら就寝した。
だが、思うように寝付けないのでそっと外へ空気を吸いに向かう。
故郷とは違い夏島の気候は丁度いいぐらいに涼しかった。
空を見上げると相変わらずの満点の星が輝いている。
その時だった。
耳に密かな砂利を踏む音が聞こえてきたのは。



「誰?……うっ!?」



後ろの首に鈍い衝撃と痛みを感じた。
きっと殴られたのだろうと思ったが反撃する術を持ってなどいなかったし、意識は既に底に沈みかけていた。




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