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ユリアに確認すると彼女は躊躇する事なく頷く。
一日くらい留守にしても罰は当たらないと思い、リーシャはお邪魔する事にした。

例えローがどう思っていても、自分には反論や行動の自由はあるのだ。
喧嘩は喧嘩らしく予想外の展開を起こしてくれるので意外に楽しく思った。

初めての喧嘩に初めての家出。

少し嬉しく思う自分がいるのは仕方がないだろう。

家に案内されるとやはり、どこもかしこもオレンジだらけだった。



「どうしてこの町はオレンジがたくさんあるの?」

「地中海がどうのこうのって言われたけど、私にもよくわからない」

「そっかぁ」



地中海という単語で思いつくのは南の島。

つまり気候がオレンジ栽培に適しているということだろう。

リーシャがそんな風に考えていると、ユリアが家に入っていくので後に付いていく。

中に入るとオレンジの香りがした。

どこへ行ってもするので、爽やかだとほわほわする。

彼女はリーシャを手招きすると椅子を引いたので頬を緩ませながら座った。



「出てきていいよ。この人はいい人だから」



ユリアは誰もいないキッチンへ呼びかける。

すると、ヒョコッと茶色い何かが出現したので首を傾げていると、それはユラユラと揺れて男の子が一人ビクビクしながら姿を現した。

その次も二人目、三人目と男の子がキッチンから出て来たので目を丸くする。

ツンツンと服を引っ張る子や遠巻きにリーシャを見る子。

ユリアを見るとケラケラと笑っていた。



「私の弟。親がいないから私が親の代わり!」

(!……だから泥棒を)



家庭内事情にリーシャは何かを言う事など出来るわけがなかった。

弟達はユリアに頭を撫でられると嬉しそうに笑う。

オレンジがまだ、いっぱいある町で幸運だろう。
食べ物が取れる利点としてはいいが、それだけでは生活出来ないのだと思った。

つくづく自分は裕福な家に拾われたのだと感じる。

リーシャが思い出に浸っているとユリアが腕まくりをし始めるのが見えたのでどうしたのかと聞くと、どうやら夕飯の準備に取り掛かるそうだ。

それなら自分も手伝えると作業に加わろうとすれば、ユリアにお客様だから駄目だとキッチンから押し出された。

これは、リーシャがユリアをお客様扱いしたからだろうか。

クスッと笑うと、弟達が遊ぶようにせがんでくるのでこちらに専念するとしよう。




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