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ペンギンは息切れを起こしているリーシャに驚いた様子だったが、すぐに温かい生姜湯を出してくれた。
彼はお茶に対して色んな種類を集めているので変わったものもある。
生姜は一応知っていたし、ペンギンの最近のお気に入りなので慣れていた。



「ローくんとね今、初めて喧嘩した……もう私達は子供じゃないのにね」

「子供より人生は大人の方が長い。喧嘩して当たり前だと思うぞ、俺は」



ペンギンも生姜湯を片手に立つ。
何だかほっこりとする言葉に、生姜湯だけのお陰ではない暖かみが胸に広がる。



「ねぇ、ペンギンくん。ローくんが私を閉じ込めておく理由は何?」

「……俺は、クルーだから」

「言えないよね……ごめんなさい」



船長に心酔していたり、服従する気持ちを汲まなければいけないのはこっちだ。
理不尽な事柄でも付いていく覚悟でないと、この海は渡れない。
しかし、リーシャにも権利はある。
当然怒ることも出来るし、無理矢理聞き出す事だって可能だ。



「ペンギンくん。私、船降りるね」

「!?……それは」

「あ、降りるっていうのは散策してくるってことだよ」



リーシャがそう付け加えればペンギンの安堵の息が聞こえた。
自分ですら何も知らない状態で荷物をまとめる無謀さは持ち合わせていない。
クスッと密かに笑うとテーブルの生姜湯の入っていた陶器椀を置く。
これもペンギンの趣味らしい。
出ていく際に彼は引き止めてきたが、ローに伝えておいて欲しいとまた扉を閉めた。
恐らくこの船ではリーシャは自由でいられない。
皆が皆、自分を外に出すまいと奮闘するだろう。
今だけは許して、と内心呟きロープ使用の梯子を降った。
見張りが慌てて降りてくる気配がしたが、足早に地面へ降りたので追いつかれなかった。
真上を見ると、まだ夕方になる前の太陽の位置だったのでこれなら大丈夫だと歩き出す。
少し甲板が騒がしくなってきたので走った。
走るのはいつぶりだろうと思いながら少し笑う。








町に着くとオレンジの香りが鼻孔を擽(くすぐ)った。
所々にオレンジの木が栽培されているようだ。
くんくんと鼻を動かしていると「あ!」と声が聞こえ、顔を動かすと先程帰ったユリアが立っていたので手を挙げる。



「お姉さん脱走してきたの?」

「脱走?……しいて言うなら、家出かな」

「家出?……うーんと、家に来る?」

「いいの?」




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