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「少な過ぎる。もっと買っとけよ」

「ちょ、ローくん!」



ポイポイと服をカゴに入れていく彼を止めようとするが、ローが最後にカゴを取ったので戻す事が出来なかった。
こういう時の彼は曲げないし曲がらないのだから再度諦めるしかない。
服を精算すると店を出て船員達と待ち合わせした酒場へと向かう。
リーシャは酒場に行く事は初めてなので緊張した。
小さい酒場が見えてくると賑わう声が聞こえてきた。
まだ昼だというのに店はアルコールの匂いで充満していて、少し気分が悪くなる。



「船に戻るか?」

「へ、平気」



何とか笑みを作るとローは無表情のまま船員達が待つテーブルへと座った。
隣に座るように足され、腰を落ち着かすと改めて店内を見回す。
手配書が貼ってある壁に、お酒を飲み交わす同業者らしき人達。
まさに大海賊時代だ。
接客の店員が、こちらまで慣れた様子で注文を取り次ぐ。
怯えた表情もなく言葉を述べる姿に感心した。
ビールや一品料理が出てくるまでの間、リーシャはソワソワと落ち着かない気持ちになる。
バンダナが大丈夫か、と聞いてくるので大丈夫だと言ったが、実は大丈夫ではない。
ローがその時、リーシャの腰に腕を巻いて身体を引き寄せてきたので思わず何事かと顔を見遣る。
ニヤッと自信に溢れた笑みで「誰も手出し出来ねェよ」と安心させる為であろう言葉を言ってきた。
それに確かな包容力があるから、また胸が暖かくなる。
だが、酒場にいる人間に怯えているわけではないので、アルコールが胸やけを起こしているのだと説明した。
すると、彼はリーシャにグレープフルーツジュースを頼んでくれたので幾分か気分が楽になる。
不意に海賊の集団らしき人達の声が聞こえてきた。



「ワンピースなんて追い求めてる奴なんて本物の馬鹿だろ!」

「……!」

(ローくん達が暴れるかも……!)



と、思い彼らを見るが、変わらずお酒を飲んだり談笑していたので肩透かしを感じる。
ローも窺い見てみたが、怒っている様には見えず沈黙の状態で飲んでいた。
ハラハラした自分が何だか可笑しく思い、首を傾げたがバンダナが薄く笑うのが見えただけ。



「……ローくん」

「何だ」

「ローくんって売られた喧嘩は買うんだと思ってた」

「利口な人間は無駄な争いで労力を使わねェんだよ」



クッと喉で笑う彼は嘲りの視線を向こうの集団に向けた。




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