×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
 
31



リーシャはローの言葉に困るしかなかった。
確かに自分は悪魔の実を食べたわけでもベポやシャチ達のように戦闘力に長けているわけでもない。
だが、だからといって蔑ろな言い方はどうしても解せなかった。
そんなリーシャの顔にローは違うと一言付け加える。
何が違うのかと少し拗ねた声を出してしまい、慌てて軽く口を押さえた。



「お前が弱いって意味じゃねェ。無傷で済む話じゃねェって言ってんだよ」

「無傷って、私は大丈夫。一般人とかに間違われて誰も海賊なんて思わないし」



船員はローとリーシャ以外ツナギを全員着ているので海賊旗のマークで狙われやすい。



「……お前はどうすれば理解するんだ」

「え?」



ローはグイッとリーシャの腕を掴み顔を近付けてきた。
突然の行動にどう反応すればいいのか分からず、ただ成り行きを見る。
ローはそのままリーシャの耳に向かって唇を寄せた。



「目ェ閉じろ。いいって言うまで開けるなよ?」

「う、うん?」



リーシャが瞼を降ろすと、ローが何か手元でガサガサとしているのを聞き取り、わけも分からずにひたすら待つ。



「少し我慢しろ」

「何を?――いっ!」



ひやりとした冷たい感覚の後にチクリと歯を少し食いしばる痛みに驚く。
耳たぶに、鋭い物が刺さる感覚に目を開ける。
視界に氷が入った袋と細い針が見えた。
何をしたのかと聞くとピアスホールを開けたと何食わぬ顔でしれっと答えたローに信じられないいう思いで耳に触れる。
触ろうとすれば手を捕まれ消毒するからと消毒液を塗られた。



「明日から俺が手入れしてやるからピアスホールを必ず見せに来い。四日後はお前も街に連れて行ってやるよ」

「私、耳にピアスする予定……ないのに。何で、開けたの?」

「お前の初めてを他の奴に奪われちゃ適わねェからな」



唯一冷静な相手に問うと、ローはそれ以上何も言わずニヤリと不適な笑みを残して自室から出て言った。
呼び止める余裕などなかったので見送る。
鏡を持ち、耳を写してみると確かに小さな穴に短い針が貫通していた。



「というか……ローくん……」



最後の言い方がアレだった事に今、恥ずかしくなってきた。
言い方というものがあるだろうに。
急上昇する体温を止めようがなく、何度も先程の言葉が頭の中でリピートされた。




prev next
[ back ] bkm