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「バンダナ、これだけはわかってちょうだい。私は貴方を嫌いになったわけじゃないの」

「わかってますよ」



にこりと笑い手を取るとライラは疑う眼差しでバンダナを見る。



「姫様は、優し過ぎるからね」



そう断言するとライラは泣きそうに微笑んだ。
やはり女の涙には勝てないと思いながら彼女の手を優しく握る。



「それに、まだあの約束が継続してるなら俺と約束を果してもらわないと」

「……そうね」

「俺はまた犯罪人としてあの人達と航海するけど、全く嫌じゃない。寧ろ楽しそうだし、あのトラファルガー・ローって男は俺が付いていくには最高の器だろうしね」



パチリとウインクをするバンダナにライラはくすくすと笑う。



「あの人が言っていた通りになったわね……」

「言ってたって?」

「それは本人に聞いた方が最適よ、バンダナ」



一体、あの海賊の長が何を口走ったのか気になって仕方なかったが何時でも聞けるので保留にしておこうと納得する。


「貴方達の旅にご加護があらんことを」



ライラの手を掲げ口元に持って行き、忠誠の口づけを一つ落とした。
約束を守る為に自分は絶対に死ぬわけにはいかないと胸にしかと、最後の彼女の思いを刻んだ。





***





「アイツ来るのかァ?」

「わかんないな。キャプテンも何にも言わないし」



シャチとベポが甲板で港の入口へと顔を向けている。
ここからバンダナが来た場合にはよく見えるのだ。



「ローくん。いきなりどうしたの?」



不意にリーシャの声が聞こえ、二人分の足音が甲板に向けて近付く。
扉を開けたのはローで、その後ろに薄緑の髪がちらちらと見えた。
船長である男は無表情に港の街方面を一点に見つめると最後にニヤリと笑う。



「来たな。ベポ、あと十分したら出航しろ」

「アイアイキャプテン!」



ローが再び視線を向けるのでリーシャもシャチも同じ場所を見る。
少しずつ人間のシルエットが浮かび上がるのが見え、それがバンダナだと気付く。
彼は船の一歩手前に来ると縄ばしごを伝い船の上に立つ。



「今日からよろしく。ロー船長」



こうして、ノースブルー最後の島でバンダナは仲間になった。
そういえばと、ライラがリーシャにこっそりこう述べていたのを思い出す。





『きっとバンダナは付いていくわ。だって彼は貴女達の“海”に魅了されたんだもの』







王女ではなく、一人の少女の悪戯めいた笑顔はこの先きっと忘れる事はないだろう。




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