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ローが勝ってバンダナが負けた。
その事実は最早変えようのないこと。
国のお抱えは解除され優勝した者が本来なるものなのだが、ローはノーと断り、賞金のみを受け取った。
これには、国中が驚愕に震撼したようで授与を執り行った国王もぽかんとしていた。
ライラとの盟約によりバンダナは思惑通りこちらに加入する事になる。
その説得と意志を確かめる役目を担うのは船長がするらしい。
リーシャ達は待つだけだ。暫しの間、国のお城の一室で船員達と居ると、前方からローが歩いてきた。
隣にバンダナがいないことにいち早く気付いたのはペンギン。
クルー候補の行方を問うと「気長に待つ」とだけ。
幼なじみはゆったりとリーシャに歩み寄るとフッと笑い腕を引いてきた。
歩幅を詰めると彼は茫然とするハートのツナギ達に「行くぞ」と船に帰ることを告げる。
誰もがバンダナはハートに加入するはずだったのではと疑問が飛び交ったが、ローは思案した表情で軽やかに靴音を城内に刻ませた。







***






噂の手中にいるバンダナは現在、ライラの自室にいた。
大会が終わった後、国王にローが護衛を辞退したのでやらないかと誘われたのだ。
だが、もう自分には出来ないだろうと感じて丁寧に断った。
その理由は無論、彼女の為である。
申し訳なさげに先程から顔を上げない女王に内心しょうがない人だと誤解を解く。



「俺は怒ってませんよ」

「そんなこと、あるはずがないわ……勝手に貴方を解雇するような真似をしたんだもの」



バンダナはおや?と珍しいライラの気落ちした声音に驚く。
普段は凛とした態度でいる彼女にしては不思議に思う。



「貴方を自由にしたかっただけなのに」

「自由?俺はもう牢屋から出てるのに、ですか」

「牢屋よりも狭い世界に縛り付けたわ。元囚人でも、私は貴方を信じていたの」



ライラの言葉にバンダナは数年前の荒れた人生を思い出す。
この国には金銭目的で入り込んだのだが、いつの間にか捕まえられていて牢屋にぶち込まれていた。
対峙した相手は歳を大分取った男だったが、こてんぱんにされた記憶がある。
その男は当時の国のお抱えの護衛だった。
格闘技のチャンピオンだったので負けた衝撃は強かったのだが、それと同時に自分はまだ弱いのだと世界の広さに圧倒したものだ。
牢屋に入って五日程経過した頃に初めて国の王女と顔を合わせた。




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