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カタカタと震える手を暖かい手が覆う。
ギュッと痛い程の抱きしめに縋った。
ローを不安にさせたのだとか、迷惑をかけたのだとか。
自分は後回しでいいと思っている。
気負いさせたくないのに、結局頼る人間はローで。
年上だと言うくせ、何も出来ない人間なのだと実感させられた。
抱きしめられた体温は思いの他暖かくてこれ程安心感を得られる場所はないだろう。



(覚悟を……しなきゃいけないんだ)



海賊のローには危険や死が付き纏う。
これからもずっと。
その隣に永遠にいられる約束は出来ないけれど、どうか彼だけは――。



(守ってください……)



祈る対象は自分勝手だと怒るかもしれない。
しかし、自分の命を削ってまで想う事は罪ではないはずだから。
唯一の家族を失いたくない。








一つの騒動に心臓が治まるとローがコロシアムの観客席まで連れていってくれた。
駆け寄る船員達に何度も謝る。
ローが「ちゃんと見とけよ」といつもの笑みを浮かべて観客席の向こうへ消えた。
何が起こったのかは一応伝えたようでシャチ達がそれからピッタリとくっついて観客席に座ったので苦笑い。
今はそこまで引っ付く必要はないのではと意見を言えば、ベポがプンプンと鼻息を荒く「油断は禁物なんだ!」と闘志に燃えていた。
恐らくローが何か仄めかしたのだろう。
クスリと思わず笑みが漏れる。
そんな中、会場が二回目のバトルトーナメントの開始コングに沸き立つ。
周りの白熱ぶりに気圧されながらも次の相手を見る。
すると、バンダナが出てきたので皆が注目した。
ライラも無意識のようにグッと首を伸ばして少し前に体を出す。
バンダナはそんな姫の視線に気付いたのか手を振って余裕を見せていた。
それにいきり立つのはバンダナと対立する挑戦者。
鎌を武器に携える細身の男に対し、彼の武器は殺傷力が刃よりも低いトンファー。
試合開始になると、軽い身のこなしで相手の鎌を避ける国のお抱え護衛。
スルスルと攻撃を避ける男を見たシャチは一様に呟く。



「うっわ、マジでウナギみてーな奴」

「ヌルヌルしてるな」



ペンギンも同じ感想らしく深く頷いた。
にこやかに軽やかに舞うが如く仕業に誰もが舌を巻いているだろう。
さすがは優勝候補だ。
きっと、ローとぶつかることになると後先が不安になった。
ライラに本当にこれでよいのかと再三聞きたくなる。
傷つけたくないはずだ、彼女もきっと。




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