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有無を言わせぬ気迫に満ちた声に、思わず反論を飲み込む。
何故そこまでして自分を閉じ込めようとするのかわからない。
ローは確かに海賊だし賞金首だしと問題は沢山抱えているが此処まで束縛されると悲しくなる。
幼なじみとして心配しているのに。



「……襲われたらどうするんだ?俺は確実に助けに行けなかった」

「大丈夫……だってば」

「何がだ。俺は高額じゃねェが列挙とした賞金首なんだぞ。お前をダシにする奴がいても可笑しくない」

「私だってローくんが心配だし……今からだって戦うんだよ?」



リーシャはローの気持ちを汲んでの行動と知らないわけではない。
無謀な事をするつもりもないし、心配をさせる為に此処へ来たのではなかった。
一言だけでもと応援の言葉をかけたかっただけなのだ。
いつも遠回しに守ってくれている事実はちゃんと理解している。
ローがリーシャに、敵襲の時に戦闘を見せない事も。



「例えローくんがどんなに悪人になったって、私の幼なじみはローくんだけなんだよ?」

「何だ悪人って、露骨過ぎるぞ」

「周りが敵でも、ローくんが犯罪者って言われても私はローくんの味方だし、信じてるもん」

「……そうかよ」



照れた癖を出す彼にふっ、と笑う。
何見てる、と全く怖くない顔にはもう怒気は含まれていなかった。
安心して立ち上がるとローがぽつりと呟く。
リーシャはその不安定な声にただ微笑みを浮かべた。






コロシアムの椅子に座ると周りに船員達が集まりリーシャを取り囲む。
船長は何と言っていたのか知りたいと聞かれたので「見てもいいみたい」と頷く。
彼は去り際にリーシャに安心を欲したのかもしれないとざわめく周りを見ながら思う。



『これからも、お前を怖がらせちまうかもしれねェ』



これからも――その台詞はきっと未来永劫の意味合いなのだろう。
今日初めてローが戦う姿を見る。
それを意味するのは『裏の世界』に足を踏み入れた幼なじみを目にするという事。
大丈夫、自分に言い聞かせる。
どんな所業を彼がしていたとしてもローはローだ。
リーシャが信じるままに。
例え血に濡れた姿があったとしても、死の外科医は既に海賊として海軍を敵に回してまで得るものが決まっているのだ。
ワンピースは生半可な気持ちなんかでは手に入らない。
リーシャだって他の誰よりも――知っている。




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