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「当たり前だ。俺は海賊なんだぞ?」

「……馬鹿」

「聞こえねェ」



聞く耳を持たない彼には痛い背中のツボを押してあげた。
すると悶える声に内心もう一度馬鹿だよ、と言う。
リーシャは再びマッサージに専念するとローの恨めしい声音が響いた。



「リーシャ……」

「聞こえないよー」



あはは、と笑ってやり返した。
その時、グッと腕を引かれ体がベッドにダイブしたので驚く。
上を見ると悪戯に見遣る目と合う。
仕返し?と尋ねると「してほしいのか?」と質問された。
こちょこちょ攻撃でも来るのかと受け身で待っていれば予想に反して手先を絡め取られる。
キョトンとしているとクン、とアロマが付いたままの香りを嗅がれた。
止めてと反論して指を動かすが彼はリーシャを横目で見ると口元を弓なりに上げる。
何を仕出かすのか予想していると掴まれたままの手が合わさり掬い取るようにアロマオイルを奪われた。
まだ途中だというのに。



「今度は俺がしてやるよ」

「え?」



何かを言う前にローはリーシャの鎖骨にオイルを塗り始めた。
スルリと入り込む指先に慌てて手を止めようとするが、男女の力の差なのか止められない。
チャリ、とタスマリンのネックレスが当たる。
首筋に生暖かい水分が浸透していく感覚は何とも言えずこそばゆい。
リーシャがモゾモゾと動くとローは耳の裏にも指先を滑らせた。



「ん……そこ、可笑しくない?」

「全く。気持ちいいだろ?」

「わかんない、よ」



頭が茹でられた様にクラクラとするだけだ。
ローの胸を押すと、その手を掴まれた。
うっすらと目を開けると熱に焦がれた視線があったので思わず意識が戻る。



(駄目、今日は私が)



本来の目的を思い出し押し倒された状態から起き上がる。
リーシャの行動に目を丸くしたローはギュッと眉根を寄せた。



「雰囲気を大事に出来ねェのか?」

「今の雰囲気はローくんにマッサージを施すことです」



はっきり言えば彼はガリッと頭をかき、諦めた様子で再び俯せになった。
流されて遊んでいれば目的は達成されなかったので危なかったと安心する。
一方でこれで良かったのだと恥ずかしい顔を内面に隠せた。
本当は煮えてしまえる程ローから抜け出したかったのだから好都合だ。
リーシャはローが見ていない間に真っ赤な顔を必死に、正常の色に何とか戻した。




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