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理由を問われても今答えられるものは持ち合わせていないと述べておく。
彼が納得しないままリーシャは背中を押した。
確実を狙う策士家なので思う事は山盛りだろうが今回は絶対に我慢してもらう。
意気込む幼なじみを尚もねめつけるローに見ないフリをしながら寝室へ押し込む。



「誘ってんのか」

「え、誘う……って?」

「あ?無意識か……生殺しにしてーのか俺を」

「さっきから何言ってるのかよくわからないけど、取り敢えずそこに座って座って」

「………」



げんなりとしたローにハテナを浮かべていれば彼がベッドに座ったのでリーシャも用意を始める。



「明日大会でしょ?だから今日は体力を回復してもらおうと思ってアロママッサージをローくんにプレゼントするよ」

「アロマ?――昨日の質問の意図はそういう事か……」

「そういう事」



リーシャがジャーンと効果音を口ずさみオレンジのアロマエッセンスとマッサージの為の本を取り出す。
本は何日か前に購入してマッサージの事前練習をベポでしていたのだ。
その成果を今日はローにお披露目する。
ローに服を脱いで横になるように指示すると彼は躊躇しながらも渋々パーカーを脱ぎ身体を俯せにした。
リーシャは少し緊張しつつローの隣に腰掛ける。



(あ……意外にしっかりしてるんだ……目のやり場に困るなぁ)



「や、やっぱり服来てくれないかな?」

「は?……もしかして意識してんのか」



と、ニヤッと笑うローに顔が赤くなるのを感じた。
いくら年上でも、小さい頃から一緒でも男の体を見るのはやはり恥ずかしい。
リーシャが違う!と小さく叫ぶと彼は笑う事を止めずに却下した。



「別に見て減るもんでもねェ。ほら、早くしろよ……気持ち良くしてくれるんだろ……?」

「何だか言い方が卑怯……て、ちょっ」



リーシャの手がご無沙汰なのをいい事にローは掴んで己の引き締まった筋肉質な背中に押し当てさせてくる。
さすがに急な不意打ちだったのでリアルに肉体の感触を感じた。
真っ赤になりながら手を離そうと抗うがローが「早くしろよ」と、別段思っていないくせに急かす。
仕方なく羞恥心が押し寄せる中、背中にアロマを垂らしマッサージを始めた。
改めてローの背中を見ると所々にかすり傷や切り傷があったので無意識に眉を潜める。



「ローくん、また怪我してる……」




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