13
「アイツ」
「ん?」
一時の休憩として部屋に通された後、食事の時に呼びに来るのでゆっくりしていてよとバンダナに言われ椅子に腰掛けた。
ローが切り出すのを感じると周りを見渡したまま相槌を打つ。
「自分を偽ってる」
「誰だって隠し事くらいあるんじゃない?」
「んなことわかってる。そういう意味じゃねェよ。強ェーくせに弱く見せてるって意味だ」
「え?うー……ん。難しいけど……上手い生き方って言うんだと思うよ」
「自分が隠れみのがか」
「うん。そういうのも生きていく上では……かな?」
曖昧に固定するとローは顎に手を置いた。
「まァ一理ある。利用出来るもんは最大限に利用し尽くせって親父も言ってたしな」
「い、いや……ジェイドさんはそういう意味で言ったわけじゃ」
「海賊として生き残る策を――」
何やら考えに浸りだしたロー。
もはやリーシャの声は聞こえないだろう。
こういう所は完璧に父親譲りだ。
テーブルにある角砂糖を摘んで紅茶の中に落とす。
ローにはコーヒーで砂糖ありだ。
なしでもいけるがありの方がどちらかと言えばいいらしい。
リーシャは俄然ありなので紅茶でもコーヒーでも入れる。
隣にはクラッカーやビスケットもあるので一休みするのには持って来いだ。
二人でぽつりぽつりと会話していると扉を叩く音がした。
返事をするとライラの声がしたので疑問に感じつつ入るように足す。
ローもジッと様子を見ながら入ってくる姫に問う。
「食事の時に会う予定じゃなかったのか?」
「はい。その前にお二人に相談したい事があったので内密に部屋から出てきました」
「バンダナさんにも内緒で?」
「バンダナに一番聞かれたくない事ですから」
ライラはそう言うと急に真面目な顔をし話を切り出した。
内容は予想に反した事だったので思わず口に手を被せる。
「武道会……?」
「アイツが優勝したってやつか」
「ええ、そうなんです。それに出てバンダナに勝って欲しいのです」
「何でまた……ライラさんは負けてほしいの?」
「……正直……そうです」
「そんな七面倒臭ェ事を考える理由は一体何なんだ?」
ローが超絶眉を下げて足を組むのを見てライラは苦笑しながら説明し始めた。
彼女がバンダナに負けてほしいと思う理由が確かに気になる。
「彼を、自由にしたいのです」
ライラの言葉が意外だった。
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